お知らせ
総合文化学科・遠藤朋之先生が翻訳を手がけた詩人 城戸朱理さん英訳詩選集『Names and Rivers』について続報
2026年11月6日
2022年から2023年にかけてblogでお知らせしている、総合文化学科・遠藤朋之先生が翻訳を手がけた詩人 城戸朱理さん英訳詩選集『Names and Rivers』について、遠藤先生から続報が届きました!
Names and Rivers のさらなる快進撃について
総合文化学科教員 遠藤朋之
2022年から23年にかけて、詩人、城戸朱理さんの英訳詩集、Names and Rivers が、フォレスト・ガンダーさんとエンドウの訳でアメリカで出版されたことはすでにこのホームページで紹介した。その出版に先立ち、本書の詩のいくつかが、世界最大な詩の雑誌 Poetry、さらにはハーヴァード大学の Harvard Review、ボストン大学のAgni などを含む8つのアメリカの文芸誌に掲載され、また、22年11月17日のThe Washington Post の "The 5 Best Poetry Collections of 2022" の記事冒頭で紹介され、さらに、National Translation Award in Poetry in 2023 (22年に翻訳出版された詩書に贈られる賞なので、1年遅れとなる)の第一次候補12冊のうちの1冊に選ばれたことも、この場で報告している。そして表紙の写真は、本学旧文学科卒業生である写真家、小野田桂子さんの手によるものだ。
そして本書、さらに快進撃を続けている。
共訳者のフォレストからあるていどメールで聞いていたのだが、あるアンソロジー(選集)に本書所収の作品が掲載される、とのこと。こちらは「あ、そう」くらいにしか受け取っていなかったのであるが、これが驚嘆ものであった。そのアンソロジーを出すのが、上記の8文芸誌の1誌、1927年にオクラホマ大学で始まった雑誌 Books Abroad を引き継いだ雑誌 World Literature Today である。この雑誌は来年で創刊100周年を迎える。そこでその100年の歩みの中で掲載された8万篇もの、詩、小説を含む作品の中から137篇を選び、1冊のアンソロジーというかたちで出すという企画だ。タイトルは、A Compass on the Navigable Sea--100 Years of World Literature 。このタイトル自体は、このアンソロジー全体の基調をなし、冒頭に掲載されているオクタヴィオ・パスの講演録のタイトル。「航行可能な海でのコンパス--世界文学の100年」とでも訳しておこうか。パスは、言うまでもなく、1990年ノーベル文学賞受賞者。そして本書のサブタイトルが重要だ。「世界文学の100年」。「世界文学」である。
まずは、この雑誌 World Literature Today について。本誌は、オクラホマ大学とともに、隔年でニュースタッド国際文学賞(「ノイシュタッド」という日本語表記もある)を世界各国の文学者に授与している。日本語版のウィキペディアでは、この賞は「ノーベル文学賞に次ぐ権威とも評される」とあり、英語版でも "often compared with the Nobel Prize in Literature" とある。過去の受賞者、そしてノミネート者は、英語版で確認できるが、これが驚く。わかりやすいところでは、エンドウの授業でも扱うゲーリー・スナイダー、日本人ではノーベル文学賞を受けた大江健三郎、何度もノーベル文学賞にノミネートされている村上春樹などが挙がる。しかし、浅学なエンドウなどはまったく知りもしない多くの世界の詩人/作家が候補に挙がっている。これが極めて重要なのだ。
さて、そのWorld Literature Today の、あらゆる世界の言語の文学を扱う「世界文学」という編集方針は、オクタヴィオ・パスのニュースタッド文学賞の受賞講演がこのアンソロジーの冒頭に掲載されてることからもわかる。「World Literature Today は、メジャーなインド・ヨーロッパ語族の文学の分析のためにあるわけではない。厳密な態度を忘れることなく、純粋で見事な共感を持って、いわゆるマイナー言語の文学の発展を追いかけてきたのだ。こういった [マイナーな] 言語が、注目すべき作品や独自の魅力を豊富に持っていることは、隠されていることではない」(p. 6、エンドウ訳)。そう、優れた文学は、世界中のどこにでもある、そしてそれは、まだ発掘されていないだけであり、それを英訳という不充分なかたちであっても発掘していこう、というのが World Literature Today の方針なのだ。そしてこのA Compass on the Navigable Seaに選ばれたのが、城戸朱理である。
この本に収録されている他の日本の作家は、村上春樹、小林多喜二、詩人では城戸朱理のみだ。そしてエンドウの授業でも必ず取り上げられるエズラ・パウンドをはじめ、誰でも知っている作家では、ヘルマン・ヘッセ、アルベール・カミュ、フランツ・カフカ、ガブリエル・ガルシア・マルケス、トニ・モリソン、トーマス・マンなどが選ばれている。
そこでエンドウがもっとも驚嘆したのは、このパスの巻頭講演録の次のページ、つまり、収録された137篇の作品のトップを飾るのが、城戸朱理のNames and Rivers の中の一篇 "Wandering Birds" だったことだ。原題は「漂鳥」。この詩は以下のように始まる、「私のなかの千の国--」。フォレストとエンドウの訳は、 "A thousand countries in myself--"。この冒頭の1行は、上記のWorld Literature Today の編集方針と極めて親和性が高いだろう。パスが冒頭で語ったように、あらゆる国、あらゆる言語が「注目すべき作品や独自の魅力を豊富に持っている」ことは自明だからだ。収録作品全体の冒頭のこの1行は、 A Compass on the Navigable Sea という、World Literature Today の100年の歴史をまとめた本書の冒頭の1行として極めてふさわしい1行となっている。
和光生よ、図書館へ走って、この1行、確認すべし。
文責:遠藤朋之
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総合文化学科・遠藤朋之先生が翻訳を手がけた詩人 城戸朱理さん英訳詩選集『Names and Rivers』について毎日新聞(2022/11/21)に掲載されました
総合文化学科・遠藤朋之先生が翻訳を手がけた詩人 城戸朱理さん英訳詩選集『Names and Rivers』がワシントン・ポスト「今年の詩書5冊」に選ばれました
