「今だから」の気持ちをアートに込めて

「今だから」の気持ちを
アートに込めて

ACTION 1 サトヤマアートサンポ

(左)林 利緒奈さん (右)下山 美羽さん

(左) 表現学部 芸術学科 2年(神奈川県・白山高等学校卒)
(右) 表現学部 芸術学科 2年(青森県・弘前実業高等学校卒)

大学構内がアートスペース

サトヤマアートサンポは、芸術学科の学生によるアートプロジェクトです。2015年から2019年までは、川崎市の黒川地域、大学近隣の岡上地区の自然の中や屋外でアート作品を発表してきました。2020年度は新型コロナウイルスの影響もあり、大学構内のみで作品制作・展示を行い、展示した作品をウェブ上で公開することになりました。この時私たちは入学したばかりの1年生。入学当初からオンライン授業がほとんどで、登校する機会はありませんでした。思い描いていた学生生活が送れない中、1年生でもこのプロジェクトに参加できることを知ったのです。大学で作品制作をしたい、画面越しでしか知らない友人と直接交流をしたい。私たちは互いにそんな気持ちを抱いていて、2人で参加することにしました。

大学構内がアートスペース

1日13時間、作品制作に没頭する

夏休みから構想を練り始め、11月後半まで3か月くらい、作品制作に没頭しました。その間、授業や課題制作に必要な時間もやりくりしながら、大学に入構許可をもらい、毎日、1日13時間の制限時間を作品制作にめいっぱい使いました。一つの作品にこれほど打ち込んだことはありませんでした。誰もが見たことがあるようで、まだ見たことのない新しいものをつくる。そんな話をするうちに、日本の鳥獣戯画と西洋のステンドグラスをミックスするというアイデアが浮かび、パレストラ4階の大きな窓を展示場所として使うことにしました。窓の外から差し込む光によって、屋内に色彩とシルエットが映し出されるという効果を狙ったからです。作品名は「鳥獣人物戯画着彩硝子」。絵画でありながら、デザイン。和であり洋。一つの枠にとらわれない作品をめざしました。また自分たちの制作風景も記録したいと思い、動画撮影と編集にも取り組みました。画角や撮影方法、カメラの使い方など、まったくの初心者でしたが、結果的に動画編集の基本を学ぶことができました。

1日13時間、作品制作に没頭する

2020年にしか経験できなかったことがある

学生がいない大学。そんな環境で作品をつくることは、決して望ましいことではないと思いますが、あえていえば2020年にしかできないことだったと思います。制作期間は、プロジェクトを監修する詫摩先生や半田先生、たまに出くわす先輩、警備員の方たちと対面するくらいでした。それでも人と会い、直接話せることは考え方や発想への刺激になりましたし、ただ素直に楽しかった。また、他者を尊重するコミュニケーションのあり方、どんな状況においても目標を持って進んでいくことの大事さ、他者への感謝を忘れないことなどを強く感じた時間でした。その他にも、私たちの作品を見た先生が授業で紹介してくれたり、展示が終わった後に「あの作品はどうしたの?もったいない」と警備員の方に声をかけてもらったり、友達に「神がかってたよ」と言われたり、うれしい反響もたくさんいただきました。なにより、私たちはつくることが好きだと再認識できました。
「この気持ちを途切れさせては堕落してしまう!」との思いから、昔使われていたという穴窯の掃除を始めました。何年も使われてなかった穴窯の再生ができたら、今度は陶芸にチャレンジしたい。すでにもう楽しみで、わくわくしています。