社会と学問をつなぐ視点

経済や社会は現場で楽しく学べ。

経済や社会は現場で楽しく学べ。

伊藤隆治 教授

経済経営学部 経済学科
専門 エンターテインメント経済学 環境芸術 環境デザイン

アーティストが教える経済学とは何か?

経済学科で教鞭をとるということは、私にとって大きなチャレンジでした。私はアーティスト活動に加え、環境アートディレクターという肩書きで、アクアマリンふくしまという水族館の環境デザインや、文化施設のデザイン設計に携わってきました。ここでいう「環境」はエコロジーではなく、景観をつくり上げるという意味です。つまり、私は経済学を研究してきた学者ではありませんでした。一方、和光大学の経済学科では、十数年前、新しい経済学科のあり方を模索していました。その結果、経済を学ぶ入り口としてエンターテインメントやファッションと経済の関係性をテーマにした科目がつくられることになり、前者の担当として私に声がかかったのです。当初は「経済学科で教えられるだろうか?」と悩みましたが、次第にゼロから新しい学びをつくるということにワクワクする気持ちが湧いてきた。それで思い切ってお引き受けすることにしたのが、今に至る道の出発点です。

伊藤隆治 教授

社会とつながるきっかけを、楽しくつくっていく。

「エンターテインメント経済学」をゼロから立ち上げるにあたって考えたのは、学生たちにリアルな世の中、リアルな経済活動を伝えることです。そこで、学生たちには地域活性化やビジネスの現場に飛び込んでもらい、世の中の現実、ビジネスの実際を体感してもらう授業を展開しました。ポイントは、私が動いている姿を見せること。学生自身がそれを参考にして主体的に動けるようになることをめざしました。

現場で学ぶという内容は、経済学科の学生たちの心に響いたようで、さまざまなプロジェクトに取り組むことにつながっていきました。島根県奥出雲町や千葉県市原市におけるエンターテインメントによる地域活性化プロジェクト、最近では「Classic Japan Rally」「鶴川Jazzナイト」の運営やサポートに参画しています。社会とつながるきっかけを「楽しく」つくっていく。学生たちにその方法を身につけてもらえれば本望です。

運営協力している「Classic Japan Rally(クラシックジャパンラリー)」での伊藤隆治ゼミナールの学生たち。

▲運営協力している「Classic Japan Rally(クラシックジャパンラリー)」での伊藤隆治ゼミナールの学生たち。「Classic Japan Rally」は、公道で行うクラシックカーラリー。スピードを競うのではなく、ドライバーも沿道の観客も、交通ルールを守りながら街を走るクラシックカーを楽しむレース。

新しい発見は、「やってみる」の先にある。

どのようなことでも自分でまずやってみる。やってみないとわからないことがある。その先に新しい発見がある。学生たちにそう教えているのだから、私も行動と発見を通じて、社会やビジネスとつながり続けていかなければなりません。最近、趣味と研究の実践を兼ねて、バンライフを始めました。バンライフとは車で旅をしながら生活するスタイルです。まず、アメリカでパブリックアートの調査をする際に試し、日本に帰ってきてからも寝泊まりできるように自分で軽自動車に手を加え、日本国内の調査旅行に出かけています。バンライフは行き当たりばったりです。電車の時刻やホテルのチェックインなどを気にせず寄り道ができる。食事は現地で仕入れた食材を自分で料理して食べる。自分の勘や感性で動けるからこそ、地域の魅力や地域特有の文化、生活基盤のことなどに目が向き、新しい発見があるのだということにあらためて気づかされました。

責任は伴いますが、学生時代は自由に動けるチャンス。そしてそれが将来の礎になることは間違いありません。エンターテインメント経済学を通じて、学生たちの挑戦を応援し、ともに新しい学びをつくっていけたらと思っています。