社会と学問をつなぐ視点

演劇のもつ可能性を追求したい

演劇のもつ可能性を
追求したい

竹田未来さん

表現学部 総合文化学科 4年
神奈川県・シュタイナー学園高等部卒

教育と演劇が、交差した先に生まれるものがある。

私の学びの出発点は、演劇への興味でした。きっかけは中学2年生の頃、授業で演劇に取り組んだ体験にあります。当時の私は引っ込み思案で、それが自分の性格だと認識していました。ところが、自分とまったく正反対の、自信家の人物を配役されてしまいました。しかしその役を演じてみると、意外にも心地よかったのです。演じているときの私の方が、本来の自分かもしれないと感じたことに衝撃を受けました。同時に、つらい気持ちを抱えている人が演劇をきっかけに固定観念や呪縛から解放されるのではないかと考えるようになったのです。それで、大学では演劇を軸に学びたいと思い、和光に入りました。初めは身振り手振りなどの身体表現に関心が向いていましたが、演劇にまつわる授業をいろいろと履修するうちに、学びの場としての演劇や、戯曲への興味など、関心分野が広がり、自分の目標がより明確になってきました。そのひとつは不登校の子どもたちと演劇をつくることです。いつになるかわかりませんが、取り組みたいと思っています。

教育と演劇が、交差した先に生まれるものがある。

学習支援員として学んだこと。

将来は、国語科教員になりたいと考えていることもあり、3年生の夏から、さがまちコンソーシアムが主催する「まこちゃん教室」のスタッフに参加しています。この活動は、一人親家庭の子どもを対象にした公的な学習支援教室で、テストの成績を上げることが第1目的ではなく、コミュニケーションを大切にし、自己肯定感を高めることをめざしています。私は週1回、何人かの生徒を担当していましたが、その中に、とても大人しい生徒がいました。言葉を投げかけても、なかなか会話が成り立ちません。彼はサッカーが好きだったので、私もサッカーを勉強したりして、なんとかコミュニケーションをとる努力を重ねていました。そしてオンライン教室に切り替わったある時から、彼が少しずつ喋ってくれるようになったのです。オンラインならば周囲を気にせず話せるし、勉強に集中できるようでした。コミュニケーションも円滑にとれるようになり、彼も気持ちが前向きになっていったように感じました。結果的に、学力も少しずつ向上していったのです。子どもたちは一人ひとり、環境に対する感じ方が違うし、前を向くきっかけも違う。この活動の経験は、教員をめざす私にとって大事な気づきを与えてくれました。

学習支援員として学んだこと。

「模倣」は、人を成長させるか?

卒業論文ではこれまでの学びの集大成として、ことばについて掘り下げたいと思っています。テーマは「模倣」です。戯曲の中の人物を演じることは、その人を想像して、真似ることです。これも「模倣」です。また西洋哲学の基本的概念の一つ「ミメーシス」も、日本語では「模倣」と訳され、解釈されています。私は小中高とシュタイナー教育を受けていたのですが、そこでも「模倣」は自己を確立する方法として大切にされています。演劇への関心を、自分の実体験ともリンクさせながら、「模倣」とはいったいどういうことなのかを追究したい。具体的には、ルネ・ジラールの模倣理論を軸にし、自分が誰かの文章を書写するなど、真似ることを繰り返しながら学ぶことにより、自分独自の文体が開発できるか、つまり私自身が成長できるかを実験してみようと思っています。和光で身についたのは、いろいろな角度から自分の興味にアプローチする勉強のやり方です。ひとつの考えに固執せず、いろいろな考えを持つ。できるだけ可能性を広げる。このやり方を実践し、よい論文に仕上げたいと思っています。