社会と学問をつなぐ視点

消費者行動を人の感情から考える。

消費者行動を
人の感情から考える。

大野幸子 准教授

経済経営学部 経営学科
専門 マーケティング論 消費者行動論

感情心理学が、購買行動に与える影響に注目。

専門は、消費者行動論とマーケティングです。研究テーマは、感情心理学に基づいたマーケティングです。具体的には、人間の持つさまざまな感情が購買行動に与える影響について研究しています。なぜ感情に関するマーケティングに興味を持ったのかというと、人間の“態度と行動の乖離”に注目したからです。私たちは心の中では「いいな」「欲しいな」と好意的な<態度>を持っていても、購買という<行動>に移さないことが多々あります。特に健康に関する行動では、この乖離が顕著に見られます。例えば、がん検診です。どんなに「行きたい!」気持ちがあっても「自分にとって大事なことだ」と思っていてもなお、「行かなくてもいっか」「まだ大丈夫!」と楽観的になってしまう。とても面白い人間の特徴だと思います。私の研究では、そのような態度と行動が乖離する消費者の背中をそっと押してくれて、消費者の行動を促しうるものとして、人の感情に注目し今日まで研究を行っています。

感情心理学が、購買行動に与える影響に注目。

感染予防対策への応用を模索する。

感情の中でも、とくに着目しているのは、罪悪感や恐怖といったネガティブな感情です。
今、世界では新型コロナウイルス感染症が流行しています。一人ひとりの感染対策が求められていますが、そのような予防行動を促す際にも「感情」は有用だと思っています。私たち日本人が(刑罰もないのに)必ずマスクをし、もし忘れた場合には買ってでも着けようとするのは、人にどう見られるかを意識し誰かに迷惑をかけたくないという“罪悪感”が大きく関係しているからでしょう。日本の政府やメディアでもそのような“罪悪感”に訴えるメッセージがよく用いられています。
一方、欧米人は罪悪感というよりも“恐怖心”で予防行動が促されているのかもしれません。行動をより促す感情はその国の文化や国民性によっても異なってくると思いますので、国際比較の点でも現在研究を進めています。これらの結果を感染予防行動にも適用していきたいと模索しているところです。

感染予防対策への応用を模索する。

いちばん大切なのは、
柔軟であること。

以前、私の取り組む研究の話を「和光3分大学(電車内の広告)」に掲載したことがあります。すると、ある企業の方々が自社の製品開発に活かしたいと会いに来てくれました。他にも度々問い合わせがあるので、実務の方も「感情」に何らかの可能性を感じてくれているのだなと思っています。ちなみにご縁をいただいたた企業の方とは、今でも統計の勉強会をしたり研究アイデアを共有したりと素敵な関係が続いています。その一方で、研究者としては実務での有用性ばかりを考えないように気をつけています。マーケティングや消費者行動という学問は実務との関係が深いですが、研究領域にとらわれず柔軟でありたいと思い、そう心がけています。
柔軟であり続けるためには、芸術や文化に触れることや多様な人たちと関わることが大切であると感じています。自分自身がリフレッシュ出来るということもありますが、芸術や文化は豊かな発想の宝庫であり、そこにはさまざまな問いや新しい発見が詰まっています。その点、和光大学では芸術や文学、社会学などさまざまな分野の先生方とお話できる機会があるので、私にとってとても良い刺激になっています。

一見関係なさそうなことでも、どこに新しい発見があるかわかりません。アンテナに引っかかったことを大切にし、主体的に取り組んでいく。学生にもそう話していますし、私自身もそう心がけて研究しています。