
“気配”に導かれて、作品を作り続ける
木版画家・絵本作家 たけがみ たえさん
表現学部 芸術学科 2008年卒
profile
大学卒業後、木版画家として活動を開始。2009年、『見たら見られた―モンゴルの遊牧で』熊谷守一大賞展佳作など公募展での受賞を重ねる。絵本も継続的に刊行。2021年より和光大学芸術学科講師を務める。
心と体に自然の“気配”が馴染んでいる
子どもの頃から両親に連れられて、よく自然の中で遊んでいました。春になったら土手で野蒜(のびる)を取ったり、磯では石をひっくり返して貝を捕まえたりと、特に食べられるものを取るのが大好きでした。季節の気配に誘われて、「そろそろあれが出ている頃かな?」と覗いたり、手を伸ばしたりする時がたまらなくワクワクするんです。
幼稚園から高校まで和光学園に通っていたので、多摩川の自然に親しむ体験学習が何より待ち遠しかった思い出があります。あまりにも楽しくて妹の学年のプログラムにも参加していたほどでした。そんな私を見て友人のお母さんが誘ってくれた、地域のナチュラリストクラブにも入り、大人たちと一緒にライフジャケット一つで川の流れに身を任せ、下流へと移動する遊びにも夢中になりました。そんなふうに全身自然にまみれて育ったせいか、季節の移ろいや生き物たちの“気配”が、大人になった今も自分の心と体にすっかり馴染んでいます。
学生時代の体験を通して「テーマ」を意識
和光大学でもキャンパスの裏の里山に、気の合う人達と出かけては野草を摘んで食べたりと、岡上の自然が身近にありました。そんなのどかな学生生活の中に制作もあって、版画室に出入りして作りたいものを作る毎日でした。ただ、それだけだと好きなことができて楽しいで終わっていたかもしれませんが、先生方は外に向けて発表することを大事に考えてくださっていました。年1回の学外展示の機会に出品し、初対面の方々から感想をいただくことで、最初はあまり意識していなかった自分の作品の「テーマ」というものにきちんと向き合うことができたのです。そのテーマが明確になったのが、4年生の頃に長野を旅して牛に囲まれたときのこと。それは牛の視線によって自分の存在がハッと浮き彫りになった瞬間で、以来、自然の中での「見たら見られた」という感覚が私の作品のテーマになりました。

“外”から入ってくるものに敏感に
その時の体験を作品にした、「見たら見られた-牛」が全国大学版画展で入賞し、卒業後は研究生として大学に在籍しながら作家活動をスタートしました。最初は版画作品だけを展示していましたが、来場してくださる方々にいろいろな感想や質問をいただく中で、作品についてもっと言葉で伝えることも必要かもしれないと気づき、版画と言葉を一緒に並べた展示をするようになりました。それが編集者の方の目に留まり、絵本を作るきっかけになったのです。作品のテーマも、作家としての方向性も、いつも外から貰えている気がします。日常の中にある変化の兆し、その“気配”を自分で気づくかどうか。気配を感じるほうに歩いていけば、必ず出会いがあり、進みたい道が見えてくると思っています。

たけがみさんへ5つの質問
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01作品のテーマと出会うのはどんなときが多い?
愛犬と散歩をしているとき。
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02学生時代の思い出の場所は?
版画室。最初は先輩ばかりでドキドキしていたけれど、いつの間にか先輩も友だちになっていた。
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03作家活動を始めることに不安はなかった?
不安より楽しみが大きかった。
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04現在、芸術学科の講師として大切にしていることは?
一緒に制作を楽しむこと。
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05作品制作で一番楽しい瞬間は?
色別に制作した版木の刷りを重ねて、最後の版をめくるとき!




