お知らせ
人間科学科・上野俊哉先生がスラヴォイ・ジジェク著の新装版『斜めから見る:大衆文化を通してラカン理論へ』の解説を担当しました!
2026年11月6日
人間科学科・上野俊哉先生がスラヴォイ・ジジェク著の新装版『斜めから見る:大衆文化を通してラカン理論へ』(発行:青土社)の解説を書いています。
上野先生から届いたコメントも、あわせてご紹介します。
皆さま、是非お手に取ってご覧ください!
新装版『斜めから見る:大衆文化を通してラカン理論へ』
<青土社Webサイトから引用>
マスイメージとラカン理論
理論化された高次の文化と、通俗的な大衆文化を重ね合わせ、そこから社会の見えない主体を浮かび上がらせる、ジジェクの透視図法。ヒッチコックからS・キング、あるいはマッカロウからロメロまで、大衆文化の豊かな実りを存分に愉しみながら、ラカン理論の核心を解き明かす。同時に、民主主義という形式的普遍主義にひそむ陥穽を告発。東欧ポスト・マルクスのラディカルなヴィジョンを鮮烈に展開。
著:スラヴォイ・ジジェク
訳:鈴木晶
出版社:青土社
定価:3,960円(税込)
発売日:2026年9月8日
ISBN:978-4-7917-7801-0
【青土社 書籍紹介ページ】
https://www.seidosha.co.jp/book/index.php?id=4148
今でこそ、邦訳が20冊以上はあるかと思われるスラヴォイ・ジジェクだが、90年代初頭はまだ知られていない、旧ユーゴ、スロヴェニア出身の謎の思想家だった。マルクスの思想とラカンの精神分析を縦横に使って現代社会や世界政治を切れ味よく論じるありようは今も変わらない。
ちょうど内戦直後の旧ユーゴ、クロアチアに通いつめるころ、ジジェクを読み出したのは90年代はじめ、和光大学で非常勤講師をはじめた時期だった。この本については、たしか96年、朝日新聞の書評委員だったときに書評を書いたのだとおぼえている。
名古屋の方の大学で、学科内で憂鬱な立場におかれていたときに、学部長であった川端香男里先生が心配して鎌倉の川端邸の新年の集いに呼んでくださり、そのときにはじめて訳者の鈴木晶さんにもお会いした。これがこの本の書評の前だったか、後だったかはおぼえていない。
この本のすごみは、ヒッチコックの映画の細部や物語、本格ミステリやハードボイルドの探偵小説の筋立てなどから、こ難しいラカンの精神分析の方法や概念をすぱっと理解させてくれるところ。ぜひとも、映画好きや文学好きには読んでほしい一冊だ。
今でこそ、「精神分析」というコマが大学にあるのは珍しくもないかもしれない。しかし、和光大学には初期から岸田秀先生の精神分析の講義が開講されていた。その後、このコマは表現学部に移り、さらに消えてしまい、今では共通教養で上野が「精神分析の地平」として開講している。
「こころの時代」「ケア」「定型発達と発達障害」・・・・が当たり前の時代、精神分析の肩身はなぜかせまくなっている。このことの意味を、学内の様々な驚くべき変容や変化のうちに考えている老人としては、この本から、あらためて学び逸れることは大変に多い。
もう一つ、おまけにつけ加えておけば、鈴木先生の娘さんでもある鈴木涼美さんのエッセイや小説を、ジジェクと並行して読む、というのもなかなか味わいぶかい読書になると、特に学生さんたちには言っておこう。
これから和光を受けるかもしれない高校生の諸君には、「こころを学ぶのは心理学だけではないよ」と言っておこうかな。
上野 俊哉(現代人間学部 人間科学科)
