和光大学NEXT5+
学長の決意
この中長期構想は、大学創立50周年を迎える2015年までの5年間を中心に、さらには18歳人口の急減が予測される2018年とそれ以後に向けて、今、和光大学が実行すべきだと考えていることを大学の内外に明らかに示すものです。社会環境の変化によって、大学教育もまた変化することを余儀なくされています。その対応のための力の源泉は、構成員の教育や研究の質であり、リーダーの統率力・運営力であると考えます。学長として、ここに確固たる決意をもって本学の理念と今後の指針を示し、全学での議論を経ながら改革を実行していきます。
共に手を携え社会における和光大学の存在価値を高めていこうではありませんか。
総論
1 和光大学とは何か
1966年4月の開学以来、「大学は一貫して研究と教育の自由の尊重の上に立つ研究の場であり教育の場である。また、大学は学問の自由という理念に基礎づけられた研究者の集団であり、そこでは自由で創造的な学術の研究を共同して行なわれなければならない」(初代学長・梅根悟『小さな実験大学』)ことを強調してきました。この言葉の持つ意義は、半世紀近く経った今日であっても、何ら変わることのない大学存在の基本理念であると確信しています。研究者として学問の自由が保障され教育の自由が実践されていく、そんな自由な研究と教育の場で、学生たちは自己実現をはかっていき、個々人がそれぞれの個性の中で人間性を実現していく、まさにそのことによって、和光大学は社会に貢献します。
2 和光大学の理念
「大学は自由な研究と教育の共同体」という建学の理念を堅持します。その理念に立って、教育実践をどのように具体化させるか追求していかなくてはなりません。 一方、時代の要請にいっそう反応し、実態に即した運用を心がけ、堅持すべき理念であっても、その中で変化が求められているもの、変えねばならないものを見極めることが重要です。
「自由」の意味
「自由」という言葉自体、建学当時と今日とでは変化してきています。大学における「自由」が「放縦・身勝手」の意味ではないことは当然であり、今日的な意味でのそれは、自己実現を遂げるために活用されるべき「自由」でなければなりません。梅根悟は、「ひとりひとりの人間の内部に宿っている可能性を引き出し、それを磨き、自身のものとして獲得させること」と説明しています。学生が内的な可能性を開発する「自由」を和光大学は保障し続けます。自己実現を成し遂げた学生は、他者の「自由」もまた尊重し、自立した社会的存在としての責任感を身に付けることが期待されます。また、学生のみならず、教職員においても、その「自由」は「個々の自由」であると同時に、有機的関係の中での個の自由であり、「責任の裏付けのある自由」であることが認識されなければなりません。
3 和光大学の進むべき方向
組織的な教育力の実現
学力低下や社会性の欠如、精神的なサポートの必要、就職困難な状況への対応など、新しい困難課題が大学に押し寄せています。それらを克服すべく、教育力を充実 させなければなりません。もはやそれらの課題は教職員個々人の対応能力を超えています。「教育の和光」をうたいながら、その内実はひとりひとりの努力にゆだねられてきた面がありました。しかしこれからは、組織としての取り組みを強化し、「教育の和光」を実質化すべきだと考えます。社会的評価に耐えうる、目に見えるかたちでの実績を積み重ねなければなりません。
社会人としての力量を身に付けさせる教育
社会の一員として社会での役割を果たすことのできる力量を持った卒業生を送り出すことは、教育機関としての責務です。学士力を背景に、社会人としてのルール、マナーを身につけ、社会の豊かな発展に貢献する社会人の育成です。そのために、教員は学問の面での教育を担うのみでなく、社会的に成熟した人格の育成をめざす教育を行うことが重要であり、真摯に学生に向き合うことができる教師が求められています。
4 ヴィジョン実現のために
「開かれた大学」、「自由な大学」という主張を掲げ続けてきた反面、主張の内容と時代の動向とのずれについての検証を怠ってきたのではないでしょうか。時代の要請にどのように対応していくかが大きな課題です。
社会に貢献できる教育・研究機関としての大学を実現するためには、教職員が大学改革の課題についての認識を共有することが不可欠です。2009年度には組織の改編を行うとともに学長室会議を設置し、さらに翌年度副学長職を発足させました。
「方針→実行→評価→次の方針」というサイクルを確立し、責任の所在の明確な大学運営を実施していきます。一方で、教職員すべてに大学全体の課題の発掘および共有と、それぞれの職分におけるスキル・アップを求めたい。そのような意識の改革・向上によって、計画的で合理的な大学運営が可能になることを期待します。
5 大学創立50周年に向けて
2015年に創立50周年を迎え、和光学園が2013年に創立80周年を迎えます。50周年の迎え方を大学として考えねばなりません。学長室会議のもとに50周年記念事業実行委員会を置き、基本方針から実施案、実施計画を策定していきます。50周年事業には、キャンパスデザイン等を含む大学全体のグランド構想も含むものと考えています。それを通じて、将来に向けた大きな飛躍の一歩を踏み出します。
各論
1 財政/現状分析
和光大学が、これまで大きな負債を抱えずに施設設備をはじめ教学諸条件の充実を図ってこられたのは、外部資金導入によるのではなく計画的な基本金組入という内部資金によって賄うことを基本として財政運営されてきたからです。その意義は大きく、安定した経営のためには今後も現在の財政規模を維持しつつバランスの取れた収支を堅持していく必要があります。しかし、近年、帰属収支差額(比率)が急激に悪化し、単年度収入で単年度支出を賄えない状況が続いています。帰属収支の差額がほとんどゼロかそれ以下では新しい事業は何もできないばかりでなく、大震災などに際しての施設設備的な備えや復旧のための経費、さらに、学生・教職員の救済・支援のための資金的準備もおぼつかないという事態となり、現状のままでは流動資産のさらなる枯渇を招くことになります。この中長期構想に述べる重点課題を成し遂げるためには、抜本的な財政計画の作成と実行が必要です。学生納付金や国庫助成金収入の大幅な増額が見込めない中、経費の節減とともに資金を社会に積極的に求めることも考えなければなりません。
目標と課題
業務監査をしっかり行い、予算管理に努めます。大きな目標は消費収支の支出超過(マイナス)状態からの脱出、帰属収支差額比率5%堅持、10%の達成です。経常的支出の固定部分と、プロジェクト予算の重点部分を切り離し、重点施策に投入できる「重点充実費」枠を確保するなど使い道の明確化を図ります。そして、次期の施設・設備充実のために、単年度1〜2億円の基本金積立を実施します。 同時に、事業と教学の計画を精査するとともに創意・工夫に満ちた業務目標の設定を奨励し、無駄な出費をなくす効率的な経費支出への努力を求めます。 また、人件費比率を削減し教育研究比率を高め、それぞれの全国私立大学法人平均(2009年度人件費比率:50.05%、教育研究経費比率:36.0%)の水準を目指す方向への格段の取り組みが必須です。2009年度の決算で59.5%だった人件費比率を2015年度までに57%にまで下げ将来的には55%にすることを目標とします。カリキュラムの合理化と非常勤講師数の抑制も避けて通れない課題です。また、同じく24.8%の教育研究比率を25%以上の水準に底上げして維持しつつ、将来的には30%にすることを目指します。 収入の面では、支出とのバランスを考慮しながら、学生の確保目標の設定を行い、同時に、学生の質確保を優先することも考慮しなければなりません。今後、学科ごとの正規学生定員数の配分の見直し、それに伴う教員の配置の見直しを前提とする財政シミュレーションの検討にも着手しなければなりません。
活動の方向性
経営方針・財政計画についての意見を聞く教職員による経営懇談会を自由な懇談会として開き、そこでは外部有識者等の意見を聞くことも試みたいと考えます。 また、事務部局においては、大学の財政および経理について、法人事務局との連携と協議を充実させるとともに、事務局長の下に「財政改革プロジェクト」を立ち上げ、先進的な改革事例とデータ等の収集、ならびに財政シミュレーションの作成力を強化します。
2 教学支援/現状分析
この数年、セメスター制度を段階を踏んで着実に進めてきました。9月の前期成績開示や、卒業年次生の後期コマ追加登録など、学生に対する有効な学習環境の提供については、かなりの改善がありました。 一方で、カリキュラムや履修登録方法があまりに複雑になり、学生が履修計画を立てにくい現状があります。教学システムへのIT化も他大学に比べて立ち遅れていると言わざるを得ません。
目標と課題
和光大学には、総合教育として専門教育と教養教育の融合に努めてきた伝統があります。それはこれからの社会にとっていよいよ必要な教育と考えます。共通教養科目の意義を再確認する必要があります。 ITを活かした教学事務・諸手続の実現が急務ですが、学生の情報に関わる入口(入試関連事項)から出口(キャリア)までを総合する電子システムである「学生ファイル」(仮称)について、その内容や方式等を検討し早期の導入をめざします。 それとともに、履修方法の簡素化とともに、窓口における学生対応の整備・充実を図りながら、Webに対応した受講登録手続きの導入、『学修の手引き』『講義要目』など印刷物の簡素化が課題です。更には、学年暦における半期15週確保の方法、特定科目への受講者の集中の解消、特定曜時に開講科目が集中している現行の時間割や教室運用等の配置の適正化といった課題もあります。 また、入学前(第0年次)教育と初年次(第1年次)教育を連動させ、その一体化により、新入生を和光大学の教育に惹きつけ、学習に対する「意欲を引き出す」指導を強めたいと思います。入学前から学習に取り組ませることは、学生にとってはモチベーションの維持であり、大学教育へのスムーズな移行として有効です。ひいては学生を社会へ送り出す第一歩となる機会作りになります。
活動の方向性
今後のカリキュラム改革を目標に、学部・学科・コースの教育内容と開講科目の検証を行い、全体的で長期的な視点からのカリキュラム編成の検討に着手します。そこには、共通教養科目・外国語科目・諸資格科目の開講数と受講学生数などについて適正規模の検討も含まれます。さらに、「第0〜1年次教育活性化」方針の作成に取り組みます。
共通教養科目の学修を単なる教養に終わらせずに、学生自身が社会に出て行くための動機付けにつなぎ、さらに生涯学び続けるテーマの核心につないでいけるよう、位置づけることが必要と考えます。そのような方向での科目作りを検討します。学部間の壁を取り払い、誰もが自由に学べる学科専門科目(あるいは共通教養科目)のゼミナールや、地域との協力・互助関係を視野に入れた地域連携ゼミナールなども検討材料です。また、情報や学習環境とも関連して、電子書籍等 を含むICTの進歩にどのように対応していくかについても、長期的視野を持って臨みます。そのほか、コアクラスやCCT制度をいっそう有効に機能させることと併せて、オフィス・アワーなど学生に応対する時間の確保を求めます。さらにアセンブリー・アワー(学内行事を実施するための固定コマ)の設置の実現に向けて、時間割の調整を図ります。また、セメスター制を学生にとってより有効なものにするよう、継続的な改善を行います。
3 学生支援/現状分析
生活支援を含めさまざまな学生の相談ごとやサークル活動などに大学のサポートが求められています。現在のキャンパスライフが、すべての学生にとって快適なものになっているかどうか。それらは大学評価の大きな要素として外部からも問われています。また、公共マナー、学内ルールについて、現状では必ずしも確立しているとは言えない状況です。特に、騒音や迷惑駐車などによって地域住民の生活を脅かすことがあるのは遺憾です。
中途退学者や除籍者の増加は深刻です。全学的な問題として、それらを減らすための方策を重点として掲げなければなりません。学生生活への適応において学生個々人が抱える困難さ、入試におけるミスマッチ、学習意欲の低下、経済的援助の必要性など問題は多岐にわたっています。
目標と課題
学生生活の質的充実を目指し、総体的な学生サービスの向上に努めます。そのために、学生からのさまざまな相談に対応する窓口を充実させます。特に、キャリア支援と、障がい者支援の部門を充実させる努力を継続します。一方で、学生には、公共マナーの遵守を求めます。学内の情報システムの新規導入に合わせて、学生支援・キャリア支援・入試などの部門にも役立つよう学生指導に関わって必要な情報の有機的集約を進めます。
活動の方向性
「アシスト学生」(学生・院生によるサポート・スタッフ)のシステム作り・組織作りに取り組みます。これは、大学の諸事業に協力し、学生集団の核となって和光大学を支えてくれる学生を育成する試みでもあります。
学生マナー(というより社会人マナー)の確立が急務です。すでに実行されている喫煙許可エリアの再設定と学内分煙の徹底をいっそう推し進め、健康的な過ごしやすいキャンパスを目指し、長期的には、全面禁煙に向けた一歩を踏み出します。バイク・車通学への対策を強化します。学生ルールの整備を進めます。
キャリア支援については、就職活動をする学生・保護者保証人・大学が一体となった活動を行います。個人の進路選択の志向を重視し、優良な企業との関係をさらに築きながら、内定率を向上させることが喫緊の課題です。全学的にキャリア支援についての意識の向上に努めなければなりません。キャリア育成支援カリキュラムやプログラムの設定、保護者向け就職講座、コミュニケーション教育などの試みを拡大し就職指導を充実させます。
4 入試・募集対策・入試広報/現状分析
2009年度入試制度改革によって受験者数の増加など一定の成果を挙げてきました。それらは全学あげての懸命な努力によって実現されたものであり、貴重な取り組みでした。しかし未だ、受験者数でも安定的な上昇傾向に向かうまでには至っておらず、経営を安定させ学生の教育効果を確かなものにしていく上で課題も山積しています。
目標と課題
正規定員の絶対確保、獲得目標の安定的実現に向け、受験者数の停滞状況を打開していきます。そのため2013年度以降の入試制度改革に踏み出します。学生の質保証は、大学の入口としての入試から学部学科の指導方針やカリキュラム構成、そして出口としてのキャリア形成まで、どのような学生を受け入れ育成していくかという大学の基本姿勢に関わる大きな課題となります。
受験者数3,000名以上、資料請求15,000以上、OC(オープンキャンパス)参加数4,000名以上を目標とします。OCなどの全学行事・AC(アドミッションセンター)の外部企画参加・各学科教員の高校訪問・専門職員による訪問など、各レベルでの募集対策事業をきめ細かく企画し実行します。
入試に関する広報は、受験生向け雑誌や受験案内サイトさらには電車内広告、大学ホームページ上での分かりやすい情報提供によりいっそう効果的な内容と媒体の開発に努めます。
活動の方向性
2013年度入試以降の入試制度基本方針を策定し、学長・担当副学長、入試実施委員会、学長事務部の意思疎通を高めて、厳正・迅速・正確な業務に努めます。
日常的な「募集対策や入試広報」の的確な実行に関しては、担当副学長・入試委員長のもと学長事務部のラインで効率的に行います。
5 大学広報と大学開放事業/現状分析
大学の広報は、建学の理念や教育方針など大学の骨格を示すものから、日々刻々の学内情報を具体的に伝えるものまで広範囲かつ多様に行ってきました。和光大学の姿を積極的に発信し、関係者への必要な情報を確実に伝える広報事業をこれまで以上に強化することが求められています。 広報の媒体は、インターネット、通信物などの紙、駅や車額などの宣伝物、雑誌やミニコミ紙への宣伝など、いずれも固有の対象と効果をねらっていて有用であり、今後ともその充実が必要です。
大学開放事業については、学科・学部を横断して大学開放センターが取りまとめる企画に全学で参加協力する体制が求められています。
目標と課題
広報戦略の3本柱、①質における「明快・迅速・有効」、②効果的な媒体と広報量の拡充、③広報に接触する機会の拡大、を重視します。特にホームページなどインターネット情報による広報事業を強めなければなりません。
大学開放事業の基本は、和光大学で行っている教育・研究の実際の姿を広く社会に開いて示し、教育・研究の成果を社会に還流させていくものです。同時にその過程で社会からの知的財産や文化を大学に提供していただき、大学と社会の絆をいっそう強いものにしていきます。
活動の方向性
建学の理念や基本方針、授業内容や教職員・学生の活動の現状をできる限り分かりやすく広報します。加えて、創立50周年に向けた、イメージ戦略やブランディング戦略にも取り組みはじめます。
大学開放事業では、全学的な見地から「ぱいでいあ講座」、「連続市民講座」、「地域連携講座」、「レクチャー・コンサート」等の有機的な連携をはかりながらの改善をめざします。さらに、隣接する自治体の文化事業との連携を重視し、特に鶴川地域での町田市民文化施設の事業への参画に取り組みます。
6 大学院/現状分析
大学院は、2013年で設置10年を迎えますが、この間一度も定員を満たしていないという存続に関わる課題を抱えてきました。院生の全体的問題として経済的負担の大きさや就職難の問題があります。留学生については修士論文作成に向けての日本語能力の低さ、学位取得と相反する研究意欲低下が指摘されています。社会人院生は、意欲は高いのですが、やはり経済的負担大という問題があります。いずれにしても大学院を取り巻く研究環境は様々な課題を抱えていますが、社会的な要請に応えながら専門的に高度な教育を行う意義は失われていません。
目標と課題
大学院の和光大学における位置づけを確認しながら、現代社会のニーズに応えていきます。また、新たな専門分野の可能性を模索します。「アジア地域」「環境」などの括りによる和光大学大学院ならではの分野設定もあるでしょう。課題としては、コースによって留学生の事情が異なりますが、留学生を考慮した入試や入学後の日本語教育の充実が挙げられます。それらと関連して定員について検討していきます。
活動の方向性
学部からの内部進学者を増やすよう努めます。また、入試の工夫により学力や研究意欲のある院生を募集し、論文指導を含む教育システムや研究科の教員構成を充実させることにより人材育成に努めます。留学生については日本語学校との連携を求め、また、大学院固有の資格取得を推奨し、就職支援にも力を入れていきます。
7 研究・学習環境、図書・情報館/現状分析
教員や学生の研究環境の施設面では、研究室や図書・情報館など設備・図書は比較的充実してきたと思われます。IT環境も、先進的とは言えないまでも需要に応えています。科学研究費など外部からの研究資金の獲得については、年々増加してきていますが、まだまだ十分とは言えません。
目標と課題
図書・情報館を中心にして、さらなる研究・学習環境の充実に努めます。具体的には、図書及びIT環境の整備において、研究作業や事務作業の効率化、学生の学習能力の向上が期待されます。教員には外部研究費の獲得への一層の応募を期待します。教育研究成果の電子化と、その蓄積としての機関リポジトリーの構築を検討していきます。
活動の方向性
情報環境が日々進化してゆく昨今、学部学科と図書・情報館とが協働しながら学生の教育指導に当たる方向は必須です。また、大学という「学びの場」において、学生同士が親しい関係を築き、そこに教職員も加わって、研究学習の共有の場が建設されるように努めていきます。 また、総合文化研究所は、組織としての在り方を検証・検討すべき時期に来ているのではないでしょうか。
8 国際交流/現状分析
二つの方向において転換期にさしかかっています。一つは、日本人学生をグローバル化の観点から育成する方向で、「内向きになってきている」と言われる日本人学生に、国際交流の意味を見出させる必要があるということです。もう一つは、留学生を受け入れる視点からの方向で、留学生についての公的補助がいわゆる「仕分け」によって削減される状況の中、受け入れることの現在的な意義を確認し続けなければならないということです。
目標と課題
日本人学生に、外国文化(異文化)への興味を引き出し、国際交流の意義を考えさせるよう努めます。留学生には修学面・生活面さらには就職の面で、今後いっそうの援助をしていきます。日本人学生と留学生の交流活動の強化も課題です。留学生の減少に対しては、受け入れ制度とも関連させて全学的な方針の確立が必要です。
活動の方向性
短期語学留学や海外フィールドワークは、学生個々人のキャリアにも結びつくことでもあり、今後とも安全に配慮しつつ展開していきます。また、留学生については、日本語教育、日本語学校との連携などにも関係しますが、入試制度の見直しも視野に入れて検討します。
9 組織活性化/現状分析
今回の組織改革はまだ道半ばですが、広範で潤滑な意思疎通の形成、意思決定の迅速化、権限の明確化など進んだ部分もありますし、全学教授会によって議論が見えるようになりました。個別会議・委員会などでは委員構成や分掌により、各会議の進め方や委 員の役割分担など、これまでとは異なるアプローチも見られます。各組織をつなぐ動線が大学構成要素(たとえば外国語や共通教養に関わる態勢)と適切にリンクされているか、などについての点検が必要でしょう。
目標と課題
教職員が、それぞれ個々に課題を持ってスキル・アップやレベル・アップを図ることができるような組織を作り、個の力を高め、組織の一体感を強めていきます。FD推進委員会の活動を中心として、チームとして問題に対応できる組織作りと、活性化を促すための自由な問題提起が可能な職場作りを目指します。
活動の方向性
学生と教職員をつなぐシステムを創出することを目指して、教職員が学生の入学前教育から卒業後の進路や諸活動までの総体の把握に努めることは、教学支援・学生支援等の学生サービス活性化に大きな役割を果たし、組織間の動きを活発化させるものと考えます。その方向性は、さらに、種々の会議・委員会の合理化や、議事録作成の迅速化や決定事項共有化の実現や、教職員間の意思疎通を補うことにも資するところがあると期待されます。
10 卒業生組織/現状分析
開学以来45年の間に、卒業生総数はおよそ2万人を超えています。すでに1期生は60歳代に達し、職業や社会生活の面で熟達した世代に成長しています。連絡の可能な卒業生には、毎年大学から通信などを送っていますが、卒業生を組織化しその組織を有効に活用するには至っていません。前学長時代に決断された「同窓会」組織設立の取り組みについては、大学と「和光同塵会」との間で下相談のような機会を持ってきましたが、いよいよ本格的に取り組む段階に来ています。
目標と課題
卒業生や現・旧教職員や和光大学支援者を中心に「和光同塵会」が結成されて20数年が経ちます。その成果も引き継ぎながら、大学が呼びかけの主体となり、「和光大学同窓会」(仮称)の設立に向けた取り組みを本格的に開始します。「同窓会」は、圧倒的多数の卒業生を中心としながらも、かつて和光大学で学んだり働いたりしたことのある人や、現在在職している教職員も何らかの資格を持って参画できるようなユニークなものを模索していきます。
活動の方向性
2011年度に「同窓会設立」の呼びかけを行い、呼びかけに応じて集まって下さった方々の中から「設立準備会」を立ち上げ、準備活動に入ります。設立の目標を、2012年秋(ホームカミングデー)とし、そのために大学としても協力を惜しみません。
11 地域との連携/現状分析
地域に根ざして大学が生きていくためには、地域の中での役割を正しく認識し、地域との連携を図らなければなりません。
現在、地域と直接の関係を持つ大学の機関として、「地域・流域共生センター」及び「大学開放センター」の2組織があります。前者はかなり広範囲な地域性、活動領域を持っています。それに対し後者は、大学の本来的職務である学術関係でのつながりです。性質は異なりますが、両者共に、地域に密着した活動内容が評価されています。ただし、財政などの課題が残り、その運営を将来どのように進めるかは検討していく必要があります。
目標と課題
地域・自治体と協働して何ができるかについて検討を進めます。「地域・流域共生センター」、「大学開放センター」の2組織については、地域貢献に資するべく運用を図っていきます。現在、相模原町田コンソーシアムへの参加、和光台自治会との災害ボランティア、大学近隣や市原市の地域イベント参加が行われていますが、本学学生の地域イベントへの参加を積極的に促します。
活動の方向性
地域社会に信頼される大学になるよう、連携行動のためのヴィジョンを検討します。また、川崎市や町田市との図書館連携をはじめとして、さらに自治体との協働を進めていきます。特に、鶴川駅前に建設中の「鶴川駅前公共施設」(仮称)への企画提示、能動的連携により、大学存在のアピールにつながる活動を行っていきます。さらに、地域住民の生涯学習への支援、近隣町会や自治会とのより緊密な提携と協力関係の充実、地域コミュニティセンターを模索するなどの取り組みを強化します。
12 危機管理/現状分析
防火・防災管理については関連規程・体制ともに整備され、実働の準備も整ってきています。しかし、それらは中核となる事務部局の体制に止まっており、学生・教職員を含んだ全学的な防火・防災意識の涵養や、訓練の実施などの面において、災害への備えの不足を残しています。安全管理の面においては、公共ルールの啓蒙の必要性、盗難等の「外」からの安全への脅威に対する取組などに課題を残しているものの、ハラスメント等への対応指針は整備されてきているところです。課外活動や海外フィールドワークに関わっては、届出制の徹底、各種保険や外部の危機管理組織との連携等の活用、危機対策費の積立などを行っています。
目標と課題
種々様々な「危機」や「問題」に対応する上での課題を正確に把握することに努めます。「危機」や「問題」の発生を未然に防止するための取り組み、日常的な備え、情報の伝達と共有、周知方法の組織化への努力を積み重ねます。同時に全学的情報セキュリティーの構築にも力を注ぎます。また、学長室会議を中心とする危機管理体制を、各学部・各ディレクター・事務部局の創意と発議を集約することにより強化していきます。
活動の方向性
東北地方太平洋沖地震の発生により、危機管理の重要性が再認識されました。現在の制度・体制についての点検、整備を可及的速やかに行い、副学長1名、学部長1名、学生支援ディレクター、及び事務局長で構成する「リスクマネージメント室(仮称)」を学長室会議に付置し、迅速で的確な対応を補佐する態勢を整えます。また、危機管理に関わる諸経費の拡充と積み立てに着手します。