★愛と平和のボノボ★No.7 2001年10月9日
☆★☆ホカホカ☆★☆

「愛と平和のボノボ」 メールマガジン目次

1 「ボノボ」という言葉を聞いたことがありますか? 2 ボノボってどこに住んでいるの? 3 ボノボはどんな姿をしているのでしょうか? 4 ボノボの叫びが聞こえますか? 5 ボノボを救おう! 6 戦うのではなく愛し合おう 7 ホカホカ 8 オスの攻撃性はどこへ 9 ボノボ的性教育 10 セックスの神様


■ ボノボは多彩な性行動をコミュニケーションに使うことは有名ですが、その中でも、最も私たちを驚かせるのはメス同士の性行動です。

■ 専門家ですら、初めて目にしたときは驚きを隠せなかったようです。ボノボのフィールド研究を行った黒田教授はその様子を次のように語っています。
「正直いって、私も初めて見たときには何を見たのかわからず我が目疑った、と白状しなければならない。じっとすぐ近くで私を見つめていた二頭のメスが、やにわに抱き合って性器を合わせ腰を振ったのだ。こいつオレをワイセツな方法でからかってんじゃあるまいな、と疑いさえした。」

■ メス同士が互いに抱き合い、見つめ合って、腰をリズミカルに左右に振り性皮をこすり合わせます。その動作は私たちが想像するよりずっと早く、1秒間に2往復くらいで腰を振り、数秒間で終わります。このようなメス同士の性行動を「性器こすり」と呼ばれたり、あるいは「ホカホカ」と呼ばれています。

■ 性皮というのは陰唇とクリトリスでできていて、発情期になると大きくピンク色に腫れ上がり、「メスの頭くらい、風船ほどに」大きくなると表現する研究者もいます。うっそうと茂るジャングルの中、きれいなピンク色した性皮のおかげでボノボのメスは遠く離れたところからでも簡単に見つけだせると言われます。ボノボの性皮は私たち人間や他の類人猿と比べて体の前方に位置しているのでホカホカするのにとても適しています。

■ ホカホカの最中には、メスは「泣きっ面」と呼ばれる歯をむき出しにした表情になります。この表情は、ボノボがうれしい時や緊張が高まったときなどに良く見られます。メスは交尾のクライマックスのときに泣きっ面を見せますが、ホカホカでは最初からこの表情が見られます。

■ ホカホカはボノボの好物があったり他の群れ集団が近づいてきたときなど、緊張が高まったときに頻発します。他のメスが食べているものが欲しいときは、じっと見つめホカホカに誘い、終わると食べ物を分けてもらうのです。私たち人間とボノボ以外の類人猿では、このように子ども以外の個体と食べ物を分け合うということはめったにありません。まして、ボノボのようにコミュニケーションと取って食物分配をする事は、非常に優れた争いの回避方法のように思います。

■ また、ホカホカはメスが新しい群れの中に仲間入りするときにも多発します。メスは発情期を迎えると、生まれ育った群れを離れ、新しい群れを探します。そこで多くのオスと交尾したり、メスとホカホカをして群れの仲間入りを果たすのです。このメスの行動は、近親交配(インセスト)をうまく避ける方法だと考えられています。

■ このように、ホカホカは挨拶行動であるのと同時に、血縁関係以外のメスと深い「きずな」を築いていくために使われるのです。これまで、私たち人間だけが生殖以外の目的で性行動を行うと言われてきましたが、ボノボのホカホカは繁殖とは全く切り離された性行動です。

■ 私たちは握手やキスをして挨拶したり、興奮や感激すると抱き合ったりします。私たちのそんな行動をボノボ流にすると「ホカホカ」になるのでしょうね。


*ボノボクイズ!*
▼「ホカホカ」の語源には色々な説がありますが、どれが正しいのでしょうか?
1:(現地トラッカーが言った。)「ニシダが言ったんだがね。こすり合わせて暖かくなることを、ジャポネではホカホカというんだってね」西田さんは1977年に短期間ワンバを訪れている。そのときにこの言葉を残したらしい。
(黒田末寿『ピグミーチンパンジー −未知の類人猿−』p,195)

2:ホカホカというのは日本人研究者だけに通じる名前で、今持って誰がそう名付けたのかは定かでない。あれを見ているとほかほかしてきそうだといって名付けたという説もあるが、彼自身は否定しつづけている。私が現地の村人から聞いたところ話では、一緒に旅に出た若い女の子同士が、寂しさを紛らわすために一つのベッドで抱き合って眠ることがあり、それをホカホカということだった
(古市剛史『性の進化、ヒトの進化 −類人猿ボノボの観察から−』p,120)

3:だからここでは、モンガンドゥ族の人たちがこの珍しい行為を指していう言葉、『ホカホカ』と使うことにする
(リチャード・ランガム『男の凶暴性はどこからきたか』p,279)

4:黒田はメス同士のこの行動を、「性器対性器のこすりあわせ」という言葉を略してGGラビング(ホカホカ)と名付けた。
(フランス・ドゥ・ヴァール『BONOBO』p,103)



【参考文献】
●『ピグミーチンパンジー −未知の類人猿−』 (1982/筑摩書房)
  著者:黒田 末寿

●『男の凶暴性はどこからきたか』 (1998/三田出版会)
  著者:リチャード・ランガム
     デイル・ピーターソン
  訳者:山下 篤子

●『性の進化、ヒトの進化 −類人猿ボノボの観察から−』 (1999/朝日新聞社)
  著者:古市 剛史

●『BONOBO −ヒトに最も近い類人猿ボノボ−』 (2000/TBSブリタニカ)  著者:フランス・ドゥ・ヴァール
  写真:フランス・ランティング
  監修:加納 隆至
  訳者:藤井 留美


* ホカホカの様子が見られます*
○ 『野生の王国 第12巻 ―ピグミーチンパンジーの世界―』
製作:群像舎/アズマックス
企画:毎日放送
発売:毎日EVRシステム (¥9.000- DVD45分)

出演・解説:加納 隆至


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和光大学ボノボプロジェクトHPhttp://www.wako.ac.jp/~itot/bonobo/

Created: Oct.12, 2001. Last modified: Oct.31, 2001.