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「雑誌記事と雑誌広告、そしてタイアップ記事のしくみとその背景」レポート

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 さる7月1日、当方が担当する「雑誌メディア研究」に、ゲスト講師の多田洋一氏をお招きして、特別講義「雑誌記事と雑誌広告、そしてタイアップ記事のしくみとその背景」を開講した。
 昨今の雑誌不況の要因のひとつとして「以前みたいに雑誌広告がたくさん入らなくなってきた」という事態が挙げられる。そもそも雑誌にとって「広告」とは、必要不可欠なものなのか? そして広告のような記事、いわゆる“タイアップ・ページ”のからくりとは? 広告宣伝と出版編集の橋渡し的業務に長年携われた多田氏をお招きして、誌面制作の背景などをうかがった。
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20100809_02.JPG  大学時代は経済学部だったという多田氏は卒業後、広告代理店やフリーペーパーの制作会社にいったん就職するも「接待や社交で、平日の夕飯は高級レストラン。だけど、週末に彼女とデートする時には、せいぜいマクドナルドかシェーキーズ。そんな生活に引っかかるものを感じて……」会社を退職、アメリカの大学に一年間留学する。帰国後、留学費用を親に返済する必要もあって仕事を探していたところ、フリーペーパー時代の知人のつてで出版社マガジンハウスを紹介され、『POPEYE』や『BRUTUS』『Tarzan』といった同社刊行雑誌のタイアップ記事制作スタッフとして、クリエイティブ・ディレクターの職を得る。
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 特定の商品やサービスを紹介し、それらを購入/利用してもらうことを目標とするタイアップ。その企画立案から、スタッフ選定、予算やスケジュール管理などが、クリエイティブ・ディレクターの役割だ。「タイアップとひとことに言っても『商品さえ載せてもらえれば、好きなように書いてもらってかまいません』という企業もあれば、書く内容やポイントを事前の会議でカッチリ決め込む場合もあります」。「僕がやってきたような編集作業は、個人的な意見の表明や自己表現といったものではなくて、むしろグループ・ワーク。個々のスタッフの名前が表立ってクレジットされることは稀だけれど、スタッフみんなが力を合わせて、ひとつの誌面を作りあげていく過程もまた、面白いものです」。例えば定価500円の女性向けシャンプーの販促記事のため、高級ホテルのスイートルームを貸し切る……など、広告宣伝の現場においては、庶民感覚からは到底生まれ得ない、突拍子もない企画や発想が重宝されることもあるのだそうだ。           *
 こうした、一連のタイアップ記事の制作や執筆の一方、近年の多田氏のキャリアの中で大きな割合を占めてきた業務として、人気テレビ番組の書籍化やドラマ、映画作品のノベライズ(小説化)といったものがある。『ビストロSMAP』や『めちゃイケ大百科事典』といった人気番組を単行本にする際、テレビ局スタッフとの入念なミーティングが不可欠だったり、『ごくせん』や『踊る大捜査線THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』を読み物化する際の、限られた執筆期間の中での孤軍奮闘ぶりなどが明かされてゆく。
 また、そうした“グループ・ワーク”の一方で、多田氏はこの春、完全自主制作のリトルマガジン「Witchenkare」(http://witchenkare.blogspot.com/)の発行をも開始したという。自身の原稿執筆に留まらず、他の執筆者候補やデザイナーの選定、印刷会社から委託販売を引き受けてくれる書店探しまで、基本的に多田氏ひとりですべてを取り仕切るという姿勢は(分業制に基づいた)グループ・ワークの対極にあり、苦労も決して少なくないが、今の自分にはやりがいの多い作業だ、とおっしゃられていた。
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 後日、受講生が提出したレポートの中には、「雑誌というのは、特定の個人の意見を強く打ち出した作品というより、あくまでも“商品”であることに気づかされた」「雑誌制作の仕事は、文章書きや編集作業以上に、事前の調査やスタッフ間の意思疎通の方が大切なのかも、と思った」「これまで『大手よりも中小企業の方が風通しがいい』と思っていたが、多田さんの『スポンサーがあってこそ、自由なクリエイティブができることもある』『大手だからこそ、やれる表現もある』といったお話をうかがって、自分の就職先についても、もう少し視野を広げようと思った」「前回の立石さんも今回の多田さんの場合も『子供の頃から雑誌が好きでこの仕事に就いた』というより『なんとなくそうなった』という話をうかがってビックリした」「多田さんの経歴を拝聴して『人生とはどうのようにも転がるものだ』という感想を抱いた」といったコメントが記されていた。




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