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まえがき

 和光大学総合文化研究所は、できるだけ専門領域の異なるメンバーでの自発的な共同研究を主体とする、その意味ではいささか変わったしくみの研究所である。それは、既成諸学の思考や方法を超えて現代の生きた課題に挑むためで、一チームの共同研究期間は原則三年。本書は、一九九七〜九九年度「アジアの教育―研究と交流」プロジェクトチームの研究成果をまとめたものである。
 一九九七年春の発足に先立つ一九九六年一一月に、次のような「共同研究チーム発足のおしらせとお誘い」を掲示して、メンバーを公募した。

 公募文に見る通り、このプロジェクトの研究目的は、現実に即した実践的色彩が濃い。途上国の「現況を調査・解明する」のが第一の目的だが、静止的なデータ集めに留まるのではなく、「民衆同士の立場で是正に力を貸す」ためであり、具体的活動例として、それらの国の教員志望の青年と和光大生の「交流」を望んだ。
 二〇世紀アジア諸国は、植民地からの独立・発展と共になお苦難の道を歩むことが多く、今後の方向の成否を左右する要因の一つに、政治・経済面と並んで教育のあり方がある。本プロジェクトは、東南アジア中心数カ国での実地調査と、学生も巻きこんだ交流・支援の実践活動を内容とし、並行して研究会を重ねて、メンバー各自がアジアの教育に持つ関心・視角を語り深め合った。
 日本はアジア諸地域に直接間接の責任を負う立場にあるが、そうした自覚とアジアの未来を共に考えることにおいて、未だ充分とはいえない。上述プロジェクトの「趣旨」はこれらの現況をふまえて、「民衆同士……力を貸す」スタートをめざした、といっていい。
 目次に見る通り、石原(代表者)がまず各国教育の実状要約と共に共通の問題点を抽出して論じ、併せて交流・支援の実践を記した。続くメンバー各自の論文は、研究会での報告・発表に基づき或いは調査行で得た課題を発展させるなど、さまざまである。今なお混沌と流動のアジアに、われわれが実践性と多様性をもって取り組んだ試みの軌跡といってよく、もちろん短時日の未熟とはいえ、こうした形の研究協力の一例とはなるのでは、と考えている。
 その一典型といえるのは、福島の文である。シンガポールは本プロジェクトチームの実地調査先ではなく、共同研究完終了の翌年、ほとんどのメンバーが続いて参加した新プロジェクト「民族と言語教育」に属する。しかし「アジアの教育」を見る眼は、日本の過去と未来、とくに教育のそれらと通底する必要がある。本書のすべての論文にも、同じ意図が隠れた共通項として含まれている。

パプアニューギニア、
ゴロカの小学校
ネパール、登校中の
カトマンズの子どもたち
インドネシア大学医学部の
学生たちとチームメンバー
ラオス、ルアンパバン
郊外のパノム村

東西南北別冊02 目次へ戻る