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 本報告は、1992年度に「共同研究機構委員会」が主催したシンポジウム「文化としての言葉―あなたと私の世界―」を補完する目的で、和光大学学生を対象に行なったアンケート調査の単純集計結果と一部クロス集計結果を含めて解説したものである。

 調査の主眼は、自己を如何に表示し他者を如何に呼ぶかという言葉の遣い方を通じて、日本語ないしは日本人の認識のあり方を捉えつつ、我と汝の関係把握のありようを考えるものである。

 なお調査項目やワーディングの原案は鈴木が主に作成し、杉山委員長との検討を踏まえた上で、共同機構委員会の議に付した後、施行した。

概 要――1161票というサンプル数は全学生3513名の三分の一に相当する。また学科配分においては顕著な偏りがなく、十全とはいい難いとしても統計的に不都合とはならない結果であった。  下表の形式は上段が回答者数で/の下段が1992年5月1日現在の在籍者数であり、( )内は女子学生数である。専攻科生と留年生を含む。その他は聴講生と研究生である。



1992共同研究機構アンケート調査 文化としての言葉――あなたと私の世界

――お願い
 教員の研究組織である「共同研究機構」では、今年の秋に全学的なシンポジウムを計画しています。テーマは「文化としての言葉―あなたと私の世界―」です。多分皆さんが興味や関心を持っている課題の一つだろうと思います。
 自分の事を何といい相手を何と呼ぶかというような事は、日頃それほど気にも留めずにいるのですが、考えてみれば、これらの表現には多くの意味が隠されていることに気づかされるのです。それぞれの国や民族の言葉には、その社会の考え方や生活のあり方が投影されています。君と僕の言葉を巡って、他の社会の人達とどの様な点で異なるのか、あるいは変わらないのかといったこと等も一緒に考えてみたいのです。それは一人一人の個人的な関心の問題だけではなく、これからの世界がどのように動いて行くのかということと関わっていると考えます。
 このことをデータに基づいて論じ合いたいと思っています。そのために皆さんの現在の様子や考えなどを聞かせて下さい。そして秋のシンポジウムにはぜひ参加して下さい。 なお調査結果はすべて統計的に処理されて、皆さんの個人的なデータとして使われることはありませんし、また学問的な研究以外には利用しませんから気軽に回答して下さい。
 和光大学 共同研究機構委員会         委員長 杉山康彦 

注=該当する番号を○で囲んでください。なお「その他」を選んだときは( )の中に具体的に書いてください。
特に指示がない限り、回答は一つだけにしてください。

――集計数字は回答度数・比率の順であり、比率は有効票を総数としたものである。

最初にあなた自身について尋ねます。

item.1 あなたの性別は?

・男 632 54.4%
・女 521 44.4%
・無効回答数 8
 全学構成比における女性の割合は40.1%である。学科別では芸術学科が64.7%と最も高く、14.6%の経済学科が最も低い。

item.2 あなたの年齢は?

・18〜19歳 497 42.9%
・20〜21歳 510 44.0%
・22〜23歳 104 9.0%
・24〜25歳 21 1.8%
・26〜27歳 4 0.3%
・28歳以上 22 1.9%
・無効回答数 3
 学年別の偏差は受講者数の多い大教室使用の一般教育科目を担当している教員に多くを依頼した経緯や、年齢構成も一、二年生が主体となっている事が判る。このことは、"教員との関係"や"希望職種"など幾つかの項目で、回答結果の分析材料としては不十分な結果となった。

item.3 居住形態は次のどれですか

・未婚で家族と一緒 805 69.6%
・アパートやマンションで一人暮し 253 21.9%
・下宿 26 2.2%
・学生寮で生活 27 2.3%
・同性の友人などと共同生活 6 0.5%
・同棲中 6 0.4%
・結婚相手と一緒 10 0.9%
・その他 25 2.2%
・無効回答数 4
 自宅からの通学者が70%と圧倒的に多いのは、多くの大学がローカル大学化している現実の反映であり、本学も例外ではないことを示している。大学運営の今後のあり方に対して、一つの示唆となろう。

item.4〜15 家族に関して

・父 893 79.7%
・母 936 83.9%
・兄姉(実数)○人 688 61.4%
  1人 364 32.5%
  2人 64 5.7%
  3人 3 0.3%
  4人 3 0.1%
  5人 0 0.0%
  6人 0 0.0%
  7人 1 0.1%
・弟妹(実数)○人 633 56.5%
  1人 393 35.1%
  2人 91 8.1%
  3人 4 0.4%
・祖父 71 6.3%
・祖母 177 15.8%
・配偶者 11 1.0%
・子(実数)○人 1118 99.7%
  1人 0 0.0%
  2人 2 0.2%
  3人 1 0.1%
・いとこ 2 0.2%
・おじ・おば 18 1.6%
・おい・めい 4 0.4%
・その他 48 4.3%
 父子家庭、母子家庭のそれぞれが、20%、16%ある。家族のあり方が大きく変容していることを窺わせる数値であろう。
 また兄弟姉妹が少なくなり、長男・長女時代といわれる現実を反映して数値上も明確にその傾向を示した。祖父との同居が6.3%に対して祖母とは15.8%であった。

item.16 あなたの所属は次のどれですか。

・学部学生 1140 98.2%
・専攻科学生 8 0.7%
・研究生 1 0.1%
・聴講生 10 0.9%
・その他 2 0.2%
・無効回答数 0

item.17 学科はどこですか。

・人間関係学科 267 23.1%
・文学科 242 20.9%
・芸術学科 102 8.8%
・経済学科 260 22.5%
・経営学科 285 24.7%
・無効回答数 5

item.18 外国に行ったことはありますか。該当する番号に○印をつけて下さい。

・無し 795 68.7%
・旅行 263 22.7%
・留学 36 3.1%
・出生 2 0.2%
・家族と在留した 26 2.2%
・その他 36 3.1%
・無効回答数 3
 これは外国語学習や社会認識に、実経験がいかに関与するかを解明するためである。結果は渡航歴を持たないものが68.7%であり、海外旅行ブームといわれていても、高等学校や大学低学年までの生活経験の中では、それほどには渡航の機会が与えられていないのである。
 性差では、男性20%:女性37%〔以下、クロス集計の場合は男対女を(%:%)で記す〕で、女子に渡航経験者が多かった(検定統計量56,079 df.5、有意水準5%、カイ二乗値11,071で有意)。
 男性よりも女性の方が「旅行」も「留学」も多いのである。女子大生の卒業旅行が話題になったが、既に在学中にもこの傾向が出ていることに注目したい。「その他」の項に、「ホームステイ」の記述があったが、ここでは「留学」に入れた。

item.19〜27 あなたが所属している大学または地域のサークルや団体で、言葉遣いに気を付けているものがありますか。該当するものに○印を付けて下さい。
スポーツクラブ・同好会・愛好会

・非常に 91 20.0%
・少々は 205 45.0%
・普通に 160 35.1%
・無効回答数 705
 若者のサークルやクラブ離れが進んでいることの現れか、予想外にクラブやサークル等の集団所属が少なかった。したがって所属集団との関わりから言語使用や、認識のあり方の違いに関する結果を導き出すのは困難と判断した。このためitem.20〜item.27は省略する。この項目も被調査者が低学年に片寄ったことが影響しているかも知れない。

item.28〜30 あなたが社会的な出来事を知る手段は次のどれですか。多い順に三つまで1、2、3、の番号を付けて下さい。

・テレビ 775 74.2%
・ラジオ 27 2.6%
・新聞 191 18.3%
・雑誌 20 1.9%
・友達から 16 1.5%
・講議中に 3 0.3%
・政治社会の専門書 1 0.1%
・家庭で 7 0.7%
・その他 4 0.4%
・無効回答数 117
 テレビ時代を反映して、当然の事ながら情報入手手段としてのテレビの優位性が認められた。テレビと現代の文化状況との関係を考える必要のあることを、改めて認識させられた。順位の未記入が多かったために無効票が多くなった。

item.31 友人と自分の考えが合わないとき、あなたはどの態度に近いですか。

・相手が納得するまで十分に議論する 177 15.4%
・相手を傷つけない程度に見解を述べる 676 58.8%
・意見が合わなくても我慢する 158 13.8%
・自分の意見を出さないように心がける 56 4.9%
・その他 82 7.1%
・無効回答数 12
 「論争」とか「議論」という語彙を項目作成当初は用いていたが、プリテストの際に参加学生から当該語句に拒絶反応が出る恐れありとの意見が出されたため、「納得するように話し合う」に変えた経緯があった。
 クロス集計の結果、顕著な特徴を示したのは、「納得するように話し合う」が男性61.3%に対し、女性は38.6%となっていることである(item.1×item.31――検定統計量20,408、df.4、有意水準5%、カイ二乗値9,488で有意)。
 これは、男女それぞれのこの項の取得率(17.3%:13.2%)と差が少ないことからすれば、一つの特性と考えられるかも知れない。

言葉に関わることについてお尋ねします。

item.32 あなたは言葉の遣い方が、相手に対する接し方を変えたり相手の人物を判断するのに、影響すると考えますか。

・人の人格や教養は言葉遣いに現れると思う 814 70.4%
・人の人格や教養と言葉遣いは余り関係がないと思う 202 17.5%
・その他 71 6.1%
・判らない 70 6.1%
・無効回答数 4

item.33 かつて"日本が戦争に負けたのは日本語が論理的ではないからだ。これからは日本人の母語をフランス語にすべきだ"と発言した高名な作家がいました。あなたは自分の母語が、日本語以外でも構わなかったと思いますか。

・何よりも言葉は民族の魂だから、日本語を大切にしなければならない 570 49.3%
・言葉は伝達の手段だから何語を母語にしょうと構わない 282 24.4%
・その他 170 14.7%
・判らない 134 11.6%
・無効回答数 5
 終戦直後の志賀直哉氏の発言にちなんだ設問であるが、母語をどのように考えているかという点で興味のある回答結果である。
 外患が切実なものとして見えないために国民的な結束を心情的に必要とせず、また母語を奪われるという状況が考えられない今日の日本の状況の、これも一つの反映であろう。
 50%弱が「日本語を大切に」を選択したのであるが、言語意識を考える上でこれは注目して良いことであろう。「何語でも良い」が24%であったことの当否については、言葉とアイデンティティの問題からも、今後考える必要があろう。

item.34 「日本語が論理的」か否かということに関して意見を聞かせて下さい。

・フランス語や英語に比べて、日本語は確かに論理的ではないと思う 127 11.1%
・日本語は西欧語とは違うが、論理的だと思う 163 14.2%
・論理的な言語と非論理的な言語という違いはないと思う 529 46.1%
・その他 72 6.3%
・判らない 257 22.4%
・無効回答数 13
 日本語が論理的か非論理的かという論議自体が学問的に整理されているとは言い難いが、国民感情論的には好個の話題となり得るテーマである。

item.35 方言について、該当すると思うものに三つまで○を付けて下さい。

・良くない言葉 3 0.1%
・非論理的な言葉 15 0.5%
・公的には遣えない言葉 377 12.3%
・正しくない言葉 18 0.6%
・下品な言葉 14 0.5%
・気持ちが伝わる言葉 582 18.9%
・論理的な言葉 17 0.6%
・暖かい言葉 734 23.9%
・田舎的な言葉 417 13.6%
・丁寧な言葉 17 0.6%
・上品な言葉 12 0.4%
・祖父母の言葉 117 3.8%
・ダサイ言葉 24 0.8%
・嫌な言葉 9 0.3%
・妙な言葉 217 7.1%
・ナウイ言葉 22 0.7%
・書き言葉にならない言葉 308 10.0%
・その他 174 5.7%
・無効回答数 8
 設問意図は後の設問にも共通するのであるが、標準語支配が如何なる形で人々の意識に浸透しているかを見るための設問であった。
 一教員から「方言への偏見を促す質問ではないか」という疑問が出された。意図に反した解釈がなされたことについては、設問の仕方に問題があったからかも知れないと自戒している。
 このようなクレームがつくほどに、明治以来の標準語政策は徹底したものであったし、中央と地方の断絶は大きいということであろう。
 上位5位までを順に並べれば、「暖かい言葉」で「気持ちが伝わる言葉」であるが、「田舎的な言葉」で「公的には遣えない言葉」であり「書き言葉にはならない言葉」という回答となった。

item.36 現在大学では外国語の授業が課せられていますが、そのことについてどのように考えますか。

・文部省によって決められているから、学習するのは仕方がない 84 7.4%
・外国語を少しでも覚えていれば、外国人と話ができて便利である 221 19.4%
・外国語を習うのは、自分の国とは違う色々の世界の様子や考え方を
 知ることが出来るので必要である
 454 39.8%
・外国語を大学で学んでも身につかないから廃止すべきだ 112 9.8%
・外国語を学ぶことによって日本語が見えて来るから習うべきである 54 4.7%
・その他 179 15.7%
・判らない 38 3.3%
・無効回答数 19
 外国語授業は必修科目であることからしても、学生の拒否反応が強く出ることが予想されがちである。「廃止」9.8%だったのを少ないとみるか多すぎるとみるか、受けとめ方は多様であろう。
 「その他」の項に、回答が集中したのも関心の高さを物語っている。多くは「興味のある者だけがやれば良い」であった。
 大学における外国語科目の位置づけを考えてみれば、異なった言語の学習を通して、異なった世界観や認識のあり方の違いを発見することに意義があるはずなのだが、「日本語が見えてくるので必要」に、4.8%という数値は低すぎるように思う。
 これに対して「世界の様子や考え方を知るのに必要」は39.9%と最も多かったが、この場合は表層的な風俗習慣の類を含めての回答であろう。設問のあり方に検討すべき余地が残された。
 学部・学科との関係では外国語授業の設置に関して、「廃止」を指向するのは経済学科・経営学科がそれぞれ33.0%・28.6%と高いのに対して、文学科は9.8%と最も少なく、次に芸術の11.6%、人間関係の17.0%である(検定統計量52,151、df.24、有意水準5%、カイ二乗値36,415で有意)。
 他方で「便利」に関しては、経済学科・経営学科がそれぞれ25.8%・26.7%と高いのに対して、芸術学科は5.4%と最も少なく、人間関係学科19.9%、文学科22.2%と実利的志向か否かの違いが見られる。
 性差と外国語との関係では女性の方が好奇心が旺盛なのか「世界の様子や考え方を知る」が(43%:57%)であり、否定的指向の「仕方がない」(70%:30%)と「廃止」(72%:24%)は男性に多かった(検定統計量59,724、df.6、有意水準5%、カイ二乗値12,592)。

item.37 他人に呼びかけられたときに、特に不愉快に思うのはどれですか。

・余り親しくない人に、なれなれしく名を呼ばれたとき 290 25.3%
・目下だと思っている人に呼び捨てなど、対等の呼び方をされたとき 340 29.7%
・特には無い 514 44.9%
・無効回答数 17

item.38 日常の言葉のやり取りの中で、どんな話題が楽しいですか。

・冗談や軽口を言うときが楽しい 543 48.9%
・小説やドラマ、映画等について語り合うのが楽しい 157 14.1%
・国際問題や社会の出来事について意見を言い合うのが楽しい 62 5.6%
・自分の内面的なことが話せるから楽しい 234 21.1%
・その他 114 10.3%
・無効回答数 51

item.39 目上の人に呼びかけるときに「あなた」を遣う事を、どう思いすか。

・非常に抵抗を感じて遣えない 552 47.9%
・相当抵抗を感じるが、遣うこともある 293 25.4%
・あまり抵抗を感じることもなく遣っている 128 11.1%
・遣ってよい言葉だと思う 78 6.8%
・その他 101 8.8%
・無効回答数 9

item.40 大学の教師に、あなたが呼びかける言葉について尋ねます。

・先生 1116 97.0%
・教授 12 1.0%
・呼び捨て 0 0.0%
・サン付け 10 0.9%
・あだ名 0 0.0%
・愛称 1 0.1%
・その他 12 1.0%
・無効回答数 10

item.41 「くだけた場面」での教師に(コンパなど)。

・先生  991 86.6%
・教授 5 0.4%
・呼び捨て 14 1.2%
・サン付け 43 3.8%
・あだ名 13 1.1%
・愛称 17 1.5%
・その他 61 5.3%
・無効回答数 17

item.42 衝突した教師に

・先生 1002 87.4%
・教授 9 0.8%
・呼び捨て 30 2.6%
・サン付け 23 2.0%
・あだ名 1 0.1%
・愛称 1 0.1%
・その他 80 7.0%
・無効回答数 15

item.43 仲間内での話題の教師に

・先生 386 34.2%
・教授 6 0.5%
・呼び捨て 384 34.0%
・サン付け 86 7.6%
・あだ名 109 9.7%
・愛称 78 6.9%
・その他 79 7.0%
・無効回答数 33
 item.40の「公的な場面」で「先生」が97.0%というのはいかにも常識的な線と言えよう。
 他方item.41の「くだけた場面」で、「サン付け」が増加し、「教授」が減少するのは、「教授」にきわめて公的なイメージがあるからであろう。
 item.42では、70年代の大学紛争当時と異なって、「その他」の項で「教師とは衝突したことが無い」という記入が10名ほど見受けられた事を付記しておきたい。
 item.43の「仲間内」の回答はバラエティに富んでおり、実体が良く出ていると思う。最も特徴的な差異を示したのが、「先生」と「呼び捨て」であろう。男性が教師を「呼び捨て」(44.2%:20.8%)にするのに対して、女性は傾向として「先生」(27.1%:43.2%)である。
 また男性にきわめて僅かながら「教授」(1.0%:0.0%)がみられるのに対し、女性は「あだ名」(8.2%:11.6%)や「愛称」(5.0%:11.6%)が男より多い(検定統計量83,275、df.6、有意水準5%、カイ二乗値12,592で有意)。

item.44 学生は一般に教師に対して「先生」と呼びかけることが多いですが、あなたの意見は次のどれに該当しますか。

・大人同士だから「先生」は必要なく姓か名に「さん」をつけるだけでよい 10 0.9%
・慣習だから「先生」と呼んでもいいが、大人の世界だから「さん」と呼んだ方がいいと思う 60 5.3%
・教師でも本来は「さん」でいいはずだが、慣習的に「先生」と呼ぶ方が穏当である 370 32.5%
・教える側と教えられる側という関係にある限り「先生」と呼んだ方がいい 613 53.9%
・教師だからといって特に気をつかわない 51 4.5%
・教師とは言葉を交わさない 33 2.9%
・無効回答数 24
 「先生」と呼びかけることへの当否についての設問であるが、過半数が「教えられる」を選択したのは、関係の妥当性を疑問視しない現代の若者気質の現れであろう。
 数値的には少ないとはいえ、「教師とは言葉を交わさない」(2.9%)学生の存在は、この大学の建学理念から言って気になる数字である。
 そしてこのグループに顕著なのがitem.43×item.44の「呼び捨て」(57.6%)である。ここには明らかな相関関係を見ることができよう。
 当然の事ながら教師に親近感を持たないことから、「サン付け」(3.0%)や「愛称」(0.0%)も減少するし、格式張った「教授」(3.0%)に集中するのであろう(検定統計量55,842、df.30、有意水準5%、カイ二乗値43,773で有意)。

item.45 あなたは大学でいろいろな機会を通して、親しくなった教師がいますか。

・ハイ 313 27.1%
・イイエ 841 72.9%
・無効回答数 7

item.46 「はい」と答えた人に尋ねます。

・何事も相談できるし、卒業後も師弟関係が続くと思う 117 39.0%
・現在は親しくしているが、卒業後は関係が無くなると思う 183 61.0%
・無効回答数 861
 前項とも関わるのであるが、「親しくなった教師」が「いる」と回答したのが27.1%というのは、この大学の特色が薄れてきたことの一つの赤信号とみることができるかも知れない。サブクェッションでは全体数からみれば更に悲観的な数値となる。ただしこれには、低学年の回答者が多かったことが大きく関与しているのかも知れない。

item.47 ニュースキャスターやレポーターなどの言葉遣いについて尋ねます。

・放送は公共的なものだから、標準語を遣うべきである 612 53.4%
・方言は理解できないことがあるから、避けるべきである 207 18.1%
・標準語がよいが、くだけた日常の話し方でよい 143 12.5%
・地域の出来事の場合などは、方言を遣う方がよい 91 7.9%
・その他 92 8.0%
・無効回答数 16
 標準語政策が如何に徹底したかを、この設問ではみることができよう。item.35と関連する設問である。
 公的なものは標準語で無ければならないと、過半数が回答しているのである。

item.48〜50 あなたの場合、この人に関しては原則的に丁寧な話し方をしていると感じているのはどの人ですか。三つまで○をつけて下さい。

・両親 41 1.3%
・学校の先輩 461 14.4%
・近所の人 390 12.2%
・職場の先輩や上役 425 13.3%
・祖父母 65 2.0%
・警察官 98 3.1%
・同世代の異性 11 0.3%
・頼み事をする相手(就職依頼などの) 332 10.4%
・年上の人 541 10.4%
・年下の異性 5 0.2%
・叔父・叔母 62 1.9%
・道など尋ねる見知らぬ人 572 17.9%
・役所の人 99 3.1%
・高級な店の人 23 0.7%
・無い 12 0.4%
・その他 66 2.1%
・無効回答数 18
 複数回答であるが、予想では圧倒的に「頼み事などをする相手」に集中し、次に、職場の先輩や上役」が続くと考えていた。したがって3位、4位に何がくるかというところが、この設問のポイントであった。
 2位の「年上の人」は、日本社会の特徴とされる年齢秩序の基準が投影している訳であり、それはそのまま3位につながるのである。
 未知なる他者というのは属性が最も不明確な相手であることから、年齢基準が唯一のよりどころとなるのであり、その意味では両者は相互補完的なのであろう。

item.51 傘を忘れた人に教える時、あなたはどの言い方をしますか。
「傘を忘れていませんか」

・あのー 645 56.0%
・おたく 3 0.3%
・あなた 10 0.9%
・ちょっと 61 5.3%
・もしもし 49 4.3%
・ねー 15 1.3%
・呼び掛けないで直接 100 8.7%
・その他 269 23.4%
・無効回答数 9

item.52 先輩や後輩を呼ぶときについて尋ねます。
先輩には

・姓をサン付け 732 64.4%
・姓を呼び捨て 5 0.4%
・名前をサン付け 100 8.8%
・名前を呼び捨て 2 0.2%
・先輩と言う 162 14.3%
・その他 135 11.9%
・無効回答数 25
後輩には
・姓をサン付け 260 23.0%
・姓を呼び捨て 342 30.2%
・名前をサン付け 68 6.0%
・名前を呼び捨て 130 11.5%
・後輩と言う 0 0.0%
・その他 331 29.3%
・無効回答数 30
 交流の期間や親密度の差異が捨象された設問のために、数値的に正確とは言えない結果となっている。
 「先輩」の選択が、14.3%あったのは予想より多かったように思う。「その他」の数値が多いのは、「相手によって違う」という記述回答が多かったことによる。

item.54 あなたの家では家族をどのように呼んでいますか。
両親に

・おとうさん・おかあさん 633 55.8%
・とうさん・かあさん 134 11.8%
・パパ・ママ 98 8.6%
・パピ・マミ 6 0.5%
・おやじ・おふくろ 60 5.3%
・名前 14 1.2%
・おとうさま・おかあさま 7 0.6%
・ちち・はは 7 0.6%
・おとー・おかー 17 1.5%
・直接呼ばない 100 8.8%
・その他 58 5.1%
・無効回答数 27

item.55 兄・姉に

・おにいさん・おねえさん 31 2.8%
・にいさん・ねえさん 16 1.4%
・おにいちゃん・おねえちゃん 177 16.0%
・にいちゃん・ねえちゃん 85 7.7%
・あにき・あねき 53 4.8%
・名前 123 11.1%
・愛称 83 7.5%
・直接呼ばない 57 5.1%
・いない 433 39.0%
・その他 51 4.6%
・無効回答数 52

item.56 父が母に

・ねー 14 1.3%
・名前の呼び捨て 206 18.4%
・サン・ちゃん(名前プラス) 27 2.4%
・きみ 5 0.4%
・おかあさん 340 30.4%
・かあさん 95 8.5%
・おかあちゃん 6 0.5%
・かあちゃん 11 1.0%
・おい 187 16.7%
・ママ 89 7.9%
・態度で示す 44 3.9%
・その他 44 3.9%
・無効回答数 41
母が父に
・ねー 51 4.6%
・名前の呼び捨て 12 1.1%
・サン・ちゃん(名前プラス) 82 7.3%
・ちょっと 24 2.1%
・パパ 116 10.4%
・おとうさん 601 53.7%
・とうさん 32 2.9%
・おとうちやん 7 0.6%
・とうちゃん 8 0.7%
・あなた 98 8.8%
・態度で示す 24 2.1%
・その他 65 5.8%
・無効回答数 41
 「おとうさん、おかあさん」型と「とうさん、かあさん」型が合わせて67.6%であった。それに対して、「パパ、ママ」型がその変形も含めて9.1%と予想外に少なかったが、家庭内呼称の懐古指向というよりも、青年期になって呼称の言い替えを行なった結果とみるべきかも知れない。
 「パパ、ママ」型は、語感からくる幼児性や甘えの感情が喚起されるために、青年期になると忌避するからとも考えられる。
 性差で(1.7%:17.7%)大きく開いたたことも、上述の観点を裏づけているように思う。(検定統計量248,978、df.10、有意水準5%、カイ二乗値18,307で有意)。
 注意すべきはitem.54で「直接呼ばない」の、8.8%という数値である。前記の解釈からすれば、青年期特有の心情の反映とも言えるが、社会現象として幼児期も含めてこの傾向が増加しているとすれば、これは重視すべき課題であるように思う。
 アンケートに際して、幼・少年期から現在の呼称であったか否かを尋ねるべきであった。

item.58 あなたは次の誰と話をする時が一番楽しいですか。

・親 21 1.9%
・兄弟・姉妹 20 1.8%
・友人 798 71.4%
・先輩 23 2.1%
・教師 1 0.1%
・近所の人 0 0.0%
・恋人・配偶者 180 16.1%
・人生相談(ラジオやテレビなどの) 1 0.1%
・旅先で知らない人と 21 1.9%
・その他 52 4.7%
・無効回答数 44
 「誰と話すのが楽しいか」という設問であるが、当然の事ながら、「友人」であり、「恋人、配偶者」を含めれば87.5%となる。「教師」が僅かに一名というのは寂しい気がしないでもないが、それが健康的なのであろう。
 問題なのは僅かではあるが存在する「親」(2%)や、「旅先で知らない人と」(2%)「人生相談」(0.1%)であろう。

item.59 名前を知らない相手や目上の人を呼ぶときに、うまく人称が遣えないと感じたことがありますか。

・ある 746 64.9%
・ない 168 14.6%
・考えたことが無い 233 20.3%
・その他 3 0.3%
・無効回答数 11

item.60 友人に対して自分や身内の事を言う時に、次のどの言い方をしますか。
自分を指すとき

・私、僕を遣う 580 50.7%
・自分の名前を言う 19 1.7%
・自分と言う 44 3.8%
・俺と言う 453 39.6%
・その他 49 4.3%
・無効回答数 16
父母を指すとき
・父、母と言う 246 21.6%
・パパ、ママと言う 29 2.5%
・親爺、お袋と言う 231 20.3%
・親と言う 473 41.6%
・その他 159 41.6%
・無効回答数 23
兄姉を指すとき
・兄、姉を遣う 238 27.7%
・兄ちゃん、など普段の言葉を遣う 366 42.6%
・兄弟・姉妹と一まとめに言う 53 6.2%
・その他 203 23.6%
・無効回答数 301
 身内の事を他者に語るとき、言葉を如何に遣い分けるかというのは、自己の対象化ないしは客体化の問題と関係している。
 item.61で親を呼ぶのに「父」や「母」ではなく、纏めて「親」と言うのは割合新しい傾向のように思う。しかもそれが41.6%あるところを注目したい。
 item.62の「兄・姉」で「その他」が多かったのは長男・長女時代の反映であり、呼ぶ相手がいなかったからである。本来は「兄・姉のいる人だけ答えて下さい」という、限定質問の項目である。

item.63 あなたは親しい友人に呼びかけるとき、次のどの遣い方をしますか。
二人だけの時

・名前を呼び捨て 229 20.3%
・姓を呼び捨て 192 17.0%
・愛称 546 48.4%
・呼ばない 20 1.8%
・名前にサン付け 25 2.2%
・名前に君 22 2.0%
・その他 93 8.3%
・無効回答数 34

item.64 他人がいるとき(教師などの)

・名前を呼び捨て 210 18.6%
・姓を呼び捨て 215 19.0%
・愛称 317 28.0%
・呼ばない 19 1.7%
・名前にサン付け 176 15.5%
・名前に君付け 82 7.2%
・その他 113 10.0%
・無効回答数 29

item.65 同性同士

・名前を呼び捨て 247 22.0%
・姓を呼び捨て 204 18.2%
・愛称 503 44.8%
・呼ばない 12 1.1%
・名前にサン付け 38 3.4%
・名前に君付け 28 2.5%
・その他 90 8.0%
・無効回答数 39

item.66 異性のとき

・名前を呼び捨て 116 10.4%
・姓を呼び捨て 113 10.1%
・愛称 343 30.8%
・呼ばない 20 1.8%
・名前にサン付け 233 20.9%
・名前に君付け 160 14.4%
・その他 129 11.6%
・無効回答数 47
 性差との関係をみると、「相手が異性の場合」では、当然の事ではあるが男性は異性に「サン付け」(34%:5%)が多く、女性は「名前に君付け」(2%:30%)が多くなる。
 特徴的なのが「姓の呼び捨て」(14%:5%)である。
 それに対して「愛称」に女性が若干多い(27%:35%)のは、親近感の表現に敏感なためと解釈してよいかも知れない(検定統計量289,350、df.6、有意水準5%、カイ二乗値12,592で有意)。
 次に「親しい友人と二人」と「他人がいるとき」のクロス集計は、他者の眼差しをどの程度意識しているかを見るためのものである。例えば「二人だけ」の時に愛称を用いるのは48.6%あるが「他人がいる」と28.1%に低下する。同様に「名前の呼び捨て」の場合も20.3%が18.3%に低下するのである(検定統計量238,271、df.36、有意水準5%、カイ二乗値50,999で有意)。

日頃感じている事や、考えている事について尋ねます。

item.67 次の職業の内、あなたが最も希望しているものに一つだけ○印をつけて下さい。

・スポーツ選手 34 2.9%
・芸能人 36 3.1%
・政治家 14 1.2%
・教師 86 7.4%
・営業関係 93 8.0%
・事務職 142 12.2%
・農林水産業 13 1.1%
・報道関係 47 4.0%
・商店経営者 40 3.4%
・飲食業 26 2.2%
・著述・評論家 62 5.3%
・記者・編集者 69 5.9%
・芸術家 127 10.9%
・技術者 67 5.8%
・漫画家 18 1.6%
・その他 243 20.9%
・無効回答数 44
 職種希望で「その他」が多かったのは、回答者の中で低学年の割合が多かったので卒業後の進路が漠然としているためであろう。「その他」の比率が多かったので、「考えていない」などの記入が多かったからである。

item.68 あなたが現在もっとも悩んでいたり、関心を持っているものは何ですか。三つまで番号を○で囲んで下さい。

・就職問題 435 14.4%
・結婚問題 95 3.1%
・対人関係 512 16.9%
・株の値下がり 19 0.6%
・持病 62 2.1%
・エイズ 105 3.5%
・癌の恐怖 34 1.1%
・講義が理解できない 84 2.8%
・経済的問題 149 4.9%
・自分の国の将来 102 3.4%
・国際関係 85 2.8%
・政治問題 69 2.3%
・環境破壊 195 6.5%
・現在の目標が定まらない 416 13.8%
・将来の展望が無い 23 0.9%
・家庭不和 27 0.9%
・親子関係 54 1.8%
・自分の容姿 166 5.5%
・その他 141 4.7%
・無効回答数 17
 「対人関係」で悩んでいるのが1位で、2位が「現在の目標が定まらない」という結果であるが、これは実際に学生と接触していて実感できることである。
 しかしこの1、2位の数値は現代の社会状況や大学の存在意義を考えるとき、十分に配慮されなければならない問題を含んでいる。
 3位の「就職問題」は当然として、4位の「将来の展望がない」も「現在の目標が定まらない」と関連しているわけであり、同様に気になる数値と言えよう。
 性差と「悩み」との関係では、数値としては小さいが「家庭不和」(0.5%:4.1%)「親子関係」(1.3%:2.5%)「容姿」(4.1%:7.2%)に女性がいずれも多く、「持病」「癌」(3.5%:2.6%)「社会問題」(5.8%:4.3%)に男性が多い。(検定統計量68,428、df.18、有意水準5%、カイ二乗値28,869で有意)。

item.71〜72 あなたは十年後の自分の姿を考えていますか。

1.家庭を持っているし、仕事の上でも責任のある、立場にいると思う 326 28.6%
2.今と余り変わらない暮し方をしていると思う 202 17.7%
3.考えたことが無い 322 28.2%
4.その他 291 25.5%
無効回答数 20

item.72 1.を答えた人に尋ねます。これからの十年間について、3年後や5年後のそれぞれの時期の自分の姿を考えた事がありますか。

・ある 258 79.1%
・ない 68 20.9%
・無効回答数 835
 十年後というのは、青年期にとっては想像以上に長い時間なのであろう。

まとめ

 本調査の報告を終わるに当たり、反省材料を提示する意味で箇条書き的に気づいた点を記しておきたい。

 1.サンプルの抽出に関して
 当初措定した、無作為抽出による郵送法などは資金不足のために採ることが叶わず、結果として教員の協力による教室でのアンケート集計に頼った。
 そのため大教室での受講者の比率が増加し、必然的に低学年に偏ることとなった。したがって「教師との関係」や「志望職業」「現在の悩み」など、一部の項目に関しては偏差を生じたために、分析には使えない結果となった。

 2.属性に関して
 属性は回答者側からすれば最も答えたくない項目であり、またプライヴァシーとも微妙に絡むものである。
 ことに言葉遣いなどを問題にする場合は、家庭環境や教育水準あるいは社会的地位などの属性が関与してくるが、被調査者の階層判定の作業は上記事由を勘案して割愛せざるを得なかった。
 また所得水準も、現代では必ずしも階層判定の指標足り得ないと考え、除外した。出身地や世生地の項も、大多数が首都圏出身者であるために割愛した。

 3.設問ならびに選択肢のワーディングについて
 選択肢の条件設定については、厳密である事が必ずしも好結果を生むとは限らないが、item.63〜66の「親しい友人への呼び掛け」等の場合は回答者が最も慎重に考える設問故に、親疎の度合いや状況などは、より丁寧に設定する必要があった。
 「その他」の項を選択した回答者の多くが、「状況による」「人によって変わる」などの記入をしたのはワーディングの不備によるものである。
「その他」が多くなったものとして、item.51の、「傘を忘れた人」がある。「その他」を選択したほとんどが「すみません」「すみませんが」を記入していた。
 呼び掛けや挨拶言葉として「すみません」「すみませんが」が、如何に多用されているかを改めて感じた。したがってこの選択肢が入っていれば、他の選択肢の数値も変動したはずである。

 最後に本調査の企画と実施を促がされた杉山康彦委員長、ならびに貴重な講義時間を割いて調査に協力された同僚教員各位に感謝している。
 更に関係事務部属として学部事務室の諸氏、ことに事務室長の日陰昭一氏と担当の上田茂氏、高梨智恵氏、また使い勝手の悪い集計ソフトの調整に尽力した幸野育男氏と、人間関係学科資料室での集計作業に多大な便宜を惜しまなかった磯健太郎氏に深甚なる謝意を表したい。続いて、プリテスト以来夏期休暇を返上して、集計業務に携わった学生諸君に謝意を表する。

文責 鈴木勁介




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