経済学教育研究会◎

ミクロ経済学とマクロ経済学の教育研究

 

山田 久・本学経済学部教授
――はじめに

 経済学科は一九九九年度から新しい理念のもとに従来のカリキュラムを大幅に変更しました。大きな変更点は学科にコース制をしいて「現代経済コース」と「応用経済コース」の二コースを設置したことです。また両コースの学生がともに履修することになる共通科目も設定されました。共通科目には、ミクロ経済学、マクロ経済学および現代経済史などの必修科目が配置されています。

 現代経済コースでは、理論、歴史ならびに実証を中心に現代経済理論、経済学史および経済政策などの科目が、また応用経済コースでは、環境、情報ならびに国際を中心に環境経済学、情報政策、国際経済論および地域経済研究などの科目が配置されているほか、それぞれに必要な選択科目が設置されています。

 一年次にはプロゼミが、二年次には外国経済書講読が、いずれも選択必修科目として設置されています。このプロゼミは、各自が経済学への関心をひきおこし、自主的創造的な学習を行なうために開設されています。その学習を通じて学生相互間、あるいは教員と学生の人間的接触を深める場所としても重要な役割を果たしています。特に他大学では三、四年次の後期課程に置かれている外国経済書講読を、本学科では、世界的に著名な原典に少しでも早くなじんで学習することが肝心であるとの認識にたって、二年次に課しているのが特徴です。

 二、三年次には、必修科目ではないが、ゼミナール(特講演習)が開講されています。ゼミナールは、各専攻分野を担当する教員のもとで、さらに専門的な研究と人間形成をめざしています。

 本経済学科のカリキュラム上の特色を要約すると以下の通りです。  

 また二〇〇三年度からはさらにカリキュラムを整備し、「応用経済コース」を「経済環境コース」に変更し、経済環境問題に重点を置くようにしました。一年次のミクロ経済学(以下ミクロと略します)、マクロ経済学(以下マクロと略します)は少人数クラスを実現させるために二クラスを同時間帯に開講し、さらに基礎教育の充実に努めていきます。


――経済学教育研究会による授業研究の発足

 近年の経済学部経済学科新入生の学力低下(基礎学力の貧弱さ)や、経済学を勉強する上での動機の希薄さはまことに憂慮すべき事態であります。しかしながら、そういった学生が今後も継続的に入学してくることもまた明白であります。われわれはこのような事態を直視して、経済学の基礎訓練や経済学を学ぶ動機付けをどのように高めていくべきかについて考えざるを得ないというところから、二〇〇一年度にこの研究会は発足しました。

 しかしながら、少子化などによる今後の大学の(存続に関わる)危機的な状況を考えれば、(経済学科では)経済学の教育法について十分吟味する必要があるでしょう。受験生の減少とともに、入試方法の多様化によって学生の基礎学力のレベルに大きなバラツキが生じている現実を考えると、今後の経済学科の新入生に、経済学の基礎のどれだけのことを、いかに教えるかということを改めて考える必要がある、というのが本研究会発足の趣旨であります。定期的な研究会の過程でさまざまな意見の交換が行なわれましたが、二〇〇一年度は経済学科の「ミクロ」と「マクロ」の授業を利用して、

 経済学科の「ミクロ」と「マクロ」は一年次の必修科目であり、また経済学の基礎科目であるという点で最適であると考えられました。授業の充実をはかるために両科目ともに、原則として毎週宿題を出しました。両科目とも前期八回、後期一〇回で合計一八回です。試験は前期末試験と後期末試験の二回、ほかに「ミクロ」で一回、「マクロ」で二回の小テストを行ないました。両科目とも宿題のテーマはその日の授業の復習です。翌週の授業開始前に宿題を提出させ、授業の前半で宿題の解説をします。その後、授業の後半の内容を再び宿題として出し、翌週の授業の前に提出させます。宿題を毎週提出させるために宿題のプリントは二部ずつ配布します(実際にはB4の用紙に両面印刷し、真ん中で切って二部にします)。一部は宿題としての提出用、もう一部は各自の保存用です。分析の対象となる学生は二〇〇一年度経済学科入学の新一年生二二七人です。


――ミクロ・マクロの成績について

図表 1
 以上のような定期的な宿題の提出と、試験の結果から、いくつかのことが判明しました。それらの結果は表と図によってまとめられていますが、若干のコメントを加えてみます。なお試験の結果などについては稿を改めて報告する予定です。

図表 2
 【図表1ミクロの成績】によるとA(優)が三六人、B(良)が五四人、C(可)が八一人、D(不可)が五六人です。割合としてはAが一五・八%、Bが二三・八%、Cが三五・七%、再履修の必要があるDが二四・七%です。Aの学生の学力は他大学の学生と比べても十分競争力があると思います。

図表 3
 【図表2マクロの成績】によるとAが四七人、Bが六一人、Cが六七人、Dが五二人です。割合としてはAが二〇・七%、Bが二六・九%、Cが二九・五%、Dが二二・九%です。マクロの成績の方がミクロよりも少し良いように思われます。マクロの方が現実経済により密着しているので、ミクロより理解しやすいのかもしれません。

図表 4
 【図表3ミクロ・マクロの成績相関】によるとミクロとマクロの両方でAをとっている学生が二七人います。ミクロがAでマクロがBの学生が八人、マクロがAでミクロがBの学生が一八人。ミクロとマクロの両方でBをとっている学生は二七人です。ミクロ、マクロで両方がAかBをとっている学生は二二七人中の八〇人、約三五%ということになります。ミクロかマクロでDをとっている学生が六七人、両方でDをとっている学生が四一人います。このグループの学生の学力をいかにつけるかが今後の課題となるでしょう。

図表 5
 【図表4ミクロの成績と宿題提出回数】、【図表5マクロの成績と宿題提出回数】によると宿題を多く出している学生が良い成績を取っていることが一目瞭然だと思います。ところが、ほぼ毎回宿題を提出しているにもかかわらず、成績が芳しくない学生もいます。これは授業内容の理解が不足しているか、または宿題を十分こなしていないのにもかかわらず機械的に提出しているだけの学生かもしれません。いずれにしても授業をフォローできるようなチューター制度のような仕組みが必要と思われます。

図表 6
 【図表6ミクロの成績と入試種類別】、【図表7マクロの成績と入試種類別】によるとミクロ・マクロの成績と入試種類別はあまり相関がなさそうに見えます。経済学科では一般入試が一般入試A(一般A)と一般入試B(一般B)に、推薦入試が指定校推薦(指定)と公募推薦(推薦)に、また社会人・留学生などの特別入試(特別)、和光高校の内部進学(内部)
図表 7
の六種類に区分されます。留学生と和光高校の学生の成績が比較的良いのが目立ちますが、一般入試と推薦入試による成績の差はあまり見られないように思われます。しかしながらCやDを多くとっているのは一般Aのように見えますが、よりいっそう厳密な統計的分析が必要だと思われます。しかしながらデータの量がそれほど大きくないので、経年的にデータを蓄積していくことも重要だと思われます。

図表 8
 【図表8ミクロの入試種類別と宿題提出回数】、【図表9マクロの入試種類別と宿題提出回数】によるとミクロ・マクロの入試種類別と宿題提出回数は指定、特別、内部の学生が比較的宿題を提出しているように思われます。宿題提出回数の少ないのは一般Aのように思われます。

 厳密な意味での統計的分析がデータ量の関係からできていませんので、それぞれの図表を参考にしてイメージをふくらませていただきたいと思います。

図表 9

――結びにかえて

 上記のような一年間の経験から導かれる提案は、以下の通りです。

 1、毎回与えられる宿題のように、復習を目的とする教材は学習の理解を深める上で非常に有効だと思われます。

 2、クラスの学生数はあまり多くない方が良さそうで、教師が学生を把握できる一〇〇人以下が適切であると思われます。

 3、授業時間以外に、さらに少人数のグループに分けて問題演習や質問に答える時間を確保し、またチューター制の導入なども必要だと思われます。さらにはインターネットを使った質問のやりとりや宿題の提出などを行なえるようにできればさらに良いと思います。

 4、半期ごとに授業が完結する方式(前期ミクロ、後期マクロ)が有効ではないかと思われます。というのは通年授業ではあまりにも長すぎると思われるからです。

 5、入試種類別と成績にはあまり強い関係はなさそうです。どのような入試形態であろうとも、入学後の学習意欲がもっとも成績に強い影響を与えているようです。つまり入学後の学習意欲を高めるような指導が必要であるということです。