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講演会 めざめよ!大学図書館 ―公共図書館からの提言―
和光大学附属梅根記念図書館主催講演会 2004.7.3
2004.7.13発行
暑い暑い土曜日の午後でしたが、図書館関係者はもちろんのこと、学生や市民の方にいたるまで、学内外から 約140名の参加 がありました。遠くは 九州から、また、講師の 常世田良(とこよだ・りょう)さんは本学卒業生 でもあるため、 かつての恩師も駆けつけ 、大盛況のうちに終了しました。参加者のみなさま、ありがとうございました!
図書館見学会
講演会を前に、本学図書館の見学会を行いました。
- 参加者 総数約30名
- 建築当時(20年前)は「バリア・フリー」ということばもまだ一般的ではなかったが、車椅子でも通れる広い書架間隔や低めのカウンター、音声ガイド付きのエレベーター、エントランスとトイレの自動ドアなどの工夫や対面朗読室内の「点字版・三省堂コンサイス英和辞典」(全百巻)などを見ていただいた。
- 雑誌のバックナンバーも開架にするなど、できるだけオープンな資料配置を心がけていることや、芸術・言語・文学は和書と洋書を同じ棚に並べることで、より手にとりやすくしていることに関心が集まった。
- 1F絵本用の棚は、実は以前カードボックスとして使用していたものを加工して生まれ変わったもの。特に図書館関係者の方には新鮮だったようだ。
講演会 講演:めざめよ!大学図書館―公共図書館からの提言―
はじめに津野本学図書館長より、今回の講演会に際して
「大学図書館の再定義の必要性」
というテーマが投げかけられました。
- 「大学の教育のあり方が変化している今日、大学図書館の枠組みはそれに対応できているのか、オンライン目録や他館協力などのテクノロジーは充実してきているが、それを使って何をすべきなのかの理論と実践が立ち遅れている。」
- 「学生が変化してきていて、本を読まなくなっている。教員の利用も減っているのではないか。それでは図書館は存在理由をなくしてしまう。“アカデミズムのシンボル”ということだけでは生き残れない」
いよいよ常世田氏の講演の始まりです。
<自己判断・自己責任型社会への移行>
図書館を論じるときには、その時代や社会背景をからめて考えなければない。そして今日本は集団主義的社会から自己判断・自己責任社会へと移行しており、正確な情報を入手して一から判断しなければ大きなリスクを伴うような社会になりつつある。図書館は冬の時代だといわれているが、情報が必要とされるのであれば、情報を提供している図書館にも光が当たるわけで、それに合致した形でサービスを提供する必要がある。
<「自己判断」に必要な情報は図書館以外にあるのか?>
TV・新聞はスポンサーに不都合なことは報道できない。書店は売り場面積が小さく、売り上げを上げるためには単行本を多く陳列することはできない。一方で出版点数は膨大なのに刷数は少ないので、読者に届かない本も多い。つまり、あるテーマについて突き詰めて収集することは難しい。インターネットは論文の本文はヒットせずせいぜい書誌情報のみ。あとは何十万件ものゴミである。
以上のような状況を考えると、図書館以外の場所で必要な情報を充分に得ることは難しいといえる。
<「自己判断」のために強化すべき図書館の機能>
- ビジネス支援
- 地元企業へのビジネス情報提供/勤労者の再教育
- 農業・漁業・酪農・林業従事者への情報提供 -- 農協など従来の指導機関では不十分
- 法律情報の提供
- 医療情報の提供
- インフォームドコンセントのためのセカンドオピニオンとして
- これらは、公共図書館が今後提供していくべき三大柱だが、生活や生命にかかわる情報なのでいい加減に手をつけることはできない。
- 議員や市長に対して
- 地域にあった行政をするために、情報収集をする必要がある。中央や党本部の方針だけでは任務を全うできない。
<浦安市立図書館では>
年間レファレンス件数は13万件。うち、高度なものは4000~5000件。市民の60%が日常的に図書館を利用していて、来館する利用者の半分以上が2時間以上館内にとどまっている。また、70%以上が文学以外の貸出である。
<情報を提供するということの目的>
まずは、情報の共有化するということである。知りたいときに知りたい情報を得られるということは民主主義の基本。では情報の共有化の目的は?それは情報の相対化のためである。「判断を下す条件を充分にそろえる。その上で絶対化する。」という判断の形式を見つめなおす必要があるのではないか。
<図書館の機能>
小さな図書館だからといって役立たないということはない。そこは蛇口であって、その向こう側には大きな知の貯水池がある。
<情報弱者と情報リテラシー>
大学生は本来情報強者であるはずだが、リテラシーを段階的に踏まえる(「文字が読めるか」-「切符が買えるか」---「文章を読んで難しい判断ができるか」)と、必ずしもそうとは言い切れない。大学図書館は力を入れてフォローする必要があるのではないか。
また、情報リテラシーの最終段階は、客観的に集めて判断した情報を超える「勘」「虫の知らせ」のような第6感。情報の正確性やあやしさに対する感性は、情報の相対化-絶対化を繰り返して現実に直面しない限り身につかないが。
<ハイブリッドライブラリー>
良質な、専門家が何年もかけて構築したような印刷物のコレクションと、インターネット(特に有料データベース)を融合させた空間が、現在最も効率のよい情報収集の方法であることは明らか。そこに双方ともに高度な知識を有す専門家、つまり司書がいる。NY公共図書館など多くのアメリカの図書館では、300~400のデータベースが使い放題で、家庭からも図書館のLANを経由して利用できる。また、利用者への声かけのための研修を受けた司書もおり、必要な資料をスピーディーに提供するだけでなく、読む順番や他の相談機関まで指定してくれることもあるそうだ。
<総合的な図書館(情報)政策の必要性>
公務員は法律に則って仕事をするもの。人的資源や予算を削られないための法的裏づけを持たない図書館は、公務員から見ればまっさきに手をつけやすい。司書は、現場での専門的な仕事だけでなく、その重要性を外部にPRできる能力も求められる。欧米のみならず、中国や韓国などアジアにおいても、図書館は情報政策の中核として発展を続けている。
講演ではビデオ上映も行われました。
- 『我が社のデータベース(ビジネス編)』ではビジネスマンが薬事法の判例を探すという設定の下、判例集やそのデータベースの紹介など、レファレンス係が適切に充分な情報を提供し、ビジネスに役立っているている姿が具体的に描かれていた。
- 常世田さんが4年前にニューヨーク公立図書館をはじめ、アメリカ各地の図書館を訪問されたときの様子もビデオで紹介された。
自己判断自己責任型社会の歴史が長いアメリカにおいて、図書館がいかに重要な役割を果たしているのかが描かれていた。
対談
講演会終了後、常世田氏と津野本学図書館長との対談が行われました。
<図書館はコミュニティ・情報基盤の中心>
市内には7つの図書館があり、市民の9割は徒歩10分以内にアクセスできる。「専門職に任せるべきである」とし、職員は庶務係も含めて39人全員が司書。
<司書が収集・作成している資料について>
お金を出して購入する資料以外にも“市民が必要としてる情報を提供する”役割を考えれば、今実施していないが、取り組むべきことはたくさんある。
- 議員が駅前で配布しているビラは、司書が集めて人ごとにファイル。市民は図書館に来れば議員の活動内容が一目でわかる。
- 新聞の折込広告は不動産ほかいくつか、20年間保存している。浦安の物価変動がわかる。
- 定点観測を毎月20年間続けている。各所から見た景色の移り変わりの記録となっている。
- 「浦安」「ディズニー」というキーワードが含まれていれば新聞(広告含む)の切抜きをして分野ごとにファイル。
<行政や議会へのサービス>
読んでほしい本(地方自治に関するテーマを5つ程度)のリストを年1回作成して、全議員に配布。議会質問の下調べにも対応している。「図書館は役立つ」といくら口で言っても理解を得るのは難しい。サービスそのものが最大のPR。
<司書の専門性と利用者の役割>
司書の専門性が低く見られがちな現状に対しては、司書の責任と利用者の責任は半々くらい。司書側の責任の半分は人事的管理(必要人数・研修・・・)を怠ってきたことにある。また、人事交流が激しくて専門性の蓄積ができないことも問題。かつ、利用者から難しい質問を受け続けなければ司書のレベル向上は難しい。
<地域大学と公立図書館の提携>
浦安では明海大学との提携を行っており、大学・市双方とも市民が読むための本に対してお金を出している。そこまで踏み込んで提携したのはおそらく日本では初めて。
質疑応答
対談に引き続き、参加者から 積極的な発言 がありました (時間が足りないほどでした!) 。いくつかご紹介します。
<市の「職員」へのサービスは何か行っているか?>
- 市職員が必要だと思われる新聞の切抜を毎日持参。また、毎朝そのようにして市役所内を出入りしているので、リクエストの声も気軽にかかる。
- 月に一度、行政関連の雑誌の目次をコピーして配布。
- 市長/助役/収入役/総務部長/教育長には、新聞切抜のスペシャル版を毎日配布。分野別に再編成したものを昼休みまでには届ける。5mm位の厚さになることも。
<浦安市立図書館各館と職員同士はどのように調整しあっているのか?>
月に一回全員で研修会を行い、週に一回全員ミーティングを行っている。また、職員がそれぞれ自発的に動けるように、ピラミッド制的な係制を廃止し、業務ごとにスタッフを置いてフラットな組織になっている。
<本やデータベースから情報収集できる能力は、大学図書館こそ役割を果たすべきだが?>
本当は小・中学校から図書館教育を実施しなければならない。それから、正規の司書こそカウンター=利用者との最前線にいて「どんな質問にも応える」態度を表すことが必要。
<ロビー活動と図書館に関するムーブメント>
議会制民主主義なのだから、自分たちの希望をきちんと伝えるべき。署名活動の労力とコストパフォーマンスの悪さを思うと、議員に直接会って説得する方が効果的。できることから、各人に適したやり方でやればよいのではないか。
<公共図書館から大学図書館はどのように見えているか?>
20~30年前から見れば門戸を開くところも増えてきて、特に相互貸借のシステムなどは積極的に行われているように見える。国民への情報提供という点から見ると、公共・大学・専門などの特殊性を超えて図書館という共通の基盤の上で見直すことが必要なのではないか。知的資源を今後どのように活かしていくのか考える必要がある。
先進的な公共図書館からの報告は、現代日本における図書館の使命や、利用者サービスに徹する姿、またそれらを遂行するための基盤づくりにいたるまで、館種を超えて参考にできるヒントに満ちていました。

