韓国のIT事情  表現学部文学科3年 斎藤健二
0 始めに

 日本では、1990年代の終りから急速に情報化社会になった。多くの人がパソコンやインターネットをやるようになり、自分のパソコンを持つようになった。隣の韓国では、1990年代の中ごろから情報化社会が急速に発達し、政府もそれに力を入れるようになった。その変化はめまぐるしく、今では日本よりコンピューター社会は進んでいる。私は、急速に発達した韓国での情報化社会と、学校でのコンピューター教育に関心があったので、和光大学表現学部文学科のフィールドワークを通して、韓国でのIT事情を調査することにした。


1 情報化政策

 1993年に、文民出身の金泳三(キム・ヨンサム)大統領が政権に就き、国際化の理念の基、21世紀に向けて、情報化政策を打ち出した。各家庭にパソコンが普及し、学校でもパソコンを使った情報化教育の確立が教育界で論議されるようになった。96年には韓国で最高部数を発行している新聞社の朝鮮日報社が政府の情報化政策を反映して、小学校のうちから情報教育を行わせる、「キッドネット運動」を始めた。それと並行して、パソコンやソフトメーカーが次々に出現した。各家庭では、子どもにパソコンを習わせる親が増えてきた。


2 韓国のパソコン普及率

 ここでは、急速に発達した韓国の情報化社会に伴うパソコン普及率を見ることにする。 以下は、「〜 実は凄い!韓国のIT事情 〜」というホームページの抜粋である。

 韓国のインターネット人口は、商用インターネット接続サービスが始まった1994年はわずか138,000人。それが毎年2倍以上の高い伸び率で増加し、99年には初めて1,000万人を突破、2000年12月時点で1,904万人に達した。たった6年間で130倍以上と急速に増加していることがわかる。この数値は7歳以上(中略)の韓国全国民(約4,260万人)の44.7%にあたる規模で、このペースで増加が続けば過半数を超えるのも時間の問題であろう。ちなみに調査時期・方法は若干異なるが、日本におけるインターネットユーザー数は3314万人(2000年8月末、日経BP社調べ、15歳以上)、米国では1億1650万人(2000年8月商務省調べ、3才以上)であり、絶対数では劣るが、普及率では日本の30.6%をはるかに上回り、米国の44.4%とほぼ比肩する。

 このように韓国はアジアのインターネット先進国なのである。では、パソコン普及率を男女の比で見るとどうだろうか。

 インターネットユーザーの性別構成比では男性が56.8%、女性が43.2%と男性の割合がやや高い。しかし、前年度と比べ男性より女性の普及率が大幅に増加しており着実に女性の利用者が増加していることがわかる。日本でも同様に女性比率が上昇していることから、今後は女性がエンジンとなってインターネットの普及率を引き上げて行くものと推測できる。

 ここでは、日本と韓国で同じように女性のパソコン利用が増加していることが興味深い。会社で働く女性や家庭の主婦がインターネットを使うようになったことが原因であろう。次にパソコン普及率を世代別に見てみたい。日本では若い世代の人のほうが高い年齢の人に比べてパソコンを使う率が高いが、韓国ではどうであろうか。

 インターネットユーザーの年代別構成比においては、「7〜19歳」の利用者が35.7%、「20代」が33.1%、「30代」が20.4%、「40代」が8.0%、「50代以上」が2.8%となっている。「7〜19歳」と「20代」を合算した「20代以下」が全ユーザーのおよそ7割を占めており、新たなテクノロジーに抵抗のない若年層を中心として普及している様子が伺える。日本の年代別インターネット構成比では20代が24.6%で最も高く、次いで30代の21.0%であり、10代は11.7%で50代より低い。(2000年2月、アクセスメディアインターナショナル調べ)韓国で「7〜19歳以下」が最も高い一つの理由は、学校教育の現場でインターネットを積極的に活用していることと密接に関係している。それを表す数値として、学校での普及率が非常に高い。日本でも大学は100%に近い学校でインターネットに接続されているが、高校では63.7%、中学校で42.8%、小学校となるとわずか27.4%であり、幅広い普及は今後の展開次第だ。(いずれも公立高校、1999年文部省調べ)一方の韓国では高校生で91.0%、中学生89.3%、小学生での51.8%となっている。小学生が授業の宿題をインターネットで調べ、結果はメールに添付して先生に送信する、というのもめずらしくない。

 これを見ると、韓国では学校でいかにパソコン教育が進んでいるかが分かる。また、学校でのパソコン設置も日本はまだまだと言っていいだろう。フィールドワークで仁荷大学にあるパソコンを見せてもらったが、パソコンの数が多く、政府がコンピューター教育に力を入れていることと、教育の現場でコンピューター教育が盛んに行われていることを実感した。では、仁荷大学の取り組みについて次に示したいと思う。


3 韓国の大学の取組み

 今回の韓国フィールドワークで韓国の仁荷大学に行き、そこでのコンピューター教育のことについて話を伺うことができた。仁荷大学の李先生が韓国の大学での最近の教育の取組みについてお話してくださった。韓国の大学では、4,5年前から、教育改革を進めている。代表的なものに、それまで東洋で行われていた先生中心の教え方から、アメリカ式の学生に合った教え方をする教育がある。これによって導入されたのが、先生の講義を評価する「講義評価制度」である。これは、学生が先生に点数をつけるもので、そこから、先生は学生のニーズに合った授業をするというシステムである。
 また、韓国の大学ではインターネットを使っての授業(サイバークラス)がはやっている。これは、インターネットを使って講義をするというものである。講義の内容としては、文だけでなく、音声を使ったり、映像を使ったり、また教室の雰囲気を出すために先生が電子黒板を使って講義をする形をとるなどさまざまあるようだ。サイバークラスのメリットは、3,4年生になって就職活動などで忙しくなった学生が家にいながら授業を受けることができることである。問題なのは、出席を確認することはできるが、学生がどのくらい勉強しているのかをチェックすることが難しいということである。また、試験を受ける際に本人が受けるのか、代理でだれかが受けてしまっているのかが分からないところも問題である。これを防ぐために、李先生は試験のときには大学にきてもらって筆記試験を行っていると言う。
 学生は、今でこそインターネットを使って情報を取ったり、勉強をしたりしているが、小さいときからどのようなコンピューター教育を受けてきたのだろうか。私はそれを調べるために仁荷大学の学生にアンケートを取ってみた。


4 アンケートについて (アンケートを見る→)

 日本では、小学校でパソコンを使った授業が普及しつつある。また、各家庭にも最低1台はパソコンがあるという情況になってきている。韓国では日本よりもコンピューター教育は進んでいて、義務教育のうちからコンピューター教育を積極的に行っている。その具体的な内容についてアンケートを取った(アンケート項目と、その結果は別紙参照)
 アンケートは仁荷大学日本語学科の1〜4年の学生12人に行った。アンケートの結果から、いくつか興味のある内容が出てきたので書くことにする。アンケートを見てみると日本と違うところや変わらないところがよく分かる。そのことについて少し書いてみよう。
 1の「家にパソコンはありますか?」という質問で、全員が「持っている」と解答した。このパソコンを全員が持っていることはこれまで見てきた韓国の様子を見事に反映している結果と言っていいだろう。また、項目2のBの「学校で週に何時間パソコンの授業がありましたか?」という質問で、1回が5人、二回が二人、3回が5人という結果が出た。週に1〜3回あるということから、しっかりと教育の一環として情報教育が行われていることが分かる。日本では総合的学習の時間で「やってもいいよ」という教育方法を取っているので、普及率が伸びない原因になるのであろう。項目3から、学校以外の施設や公共機関でパソコンの講習会が盛んに行われていることが分かるが、日本でも最近自治体や施設でインターネット講習会が増えてきている。活用内容では、項目4の結果から、日本と同じようにワープロ、ホームページ検索、ゲームやメール・チャット、インターネットショッピングが多いようだ。
 次に気になる点についていくつか以下に示したいと思う。

(1) 項目1の結果を見ると、アンケートに答えてくれた学生は、学年はばらばらだが、学校でパソコンを始めている。しかし、ホームページ検索を習ったという人が0人である。また、項目3のBから分かるように、学校以外でパソコンの教育を受けたことについても、インターネット講習が0人である。ワープロやソフトの使い方は教えてもらうが、ホームページの検索は自分でできるようになるのが普通なのだろうか。
(2) このアンケートに答えてくれた12人全員が家にパソコンがあるが、項目6にあるように、インターネットカフェを利用している人がそのうち11人もいる。週に1〜3回とほとんど毎日と解答した人を合わせて10人になった。おそらくインターネットを利用するためにカフェを利用し、ワープロやソフトによる編集は家のパソコンで行っているのであろう。家にパソコンがありながらインターネットカフェを使うということは、家でのインターネット接続環境が電話回線で、ケーブルではないことが推測できる。たくさん調べものがあったり、ゲームをやる場合には料金がかさむのでとても家ではできないはずだ。
(3) 項目5で、メールを使うようになってから、手紙を書く回数が増えたという人がいた。おそらく、その人は、あまりメールをやらない人で、手紙によるやりとりでないと許されない人間関係にあるのか、間違えて記入してしまったのであろう。


5 まとめ

 これまで見てきたように韓国は日本よりもかなりITは進んでいる。仁荷大学でのパソコンの多さ、インターネットを使って授業が行われていることは、韓国に行く前は想像もしていなかった。まさにITの普及を目の当たりにさせられた。しかし、なにかが便利になるということは、かならず影が付き物である。仁荷大学の学生と買い物をする時間があったので、CDショップに行った。CDを見ながら、その学生はインターネットでの音楽配信による著作権問題について話してくれた。あまりにも勝手にネットで音楽を流すので、CDは売れず、著作者を侵害しているという。他にもウィルスなどの問題もある。これは、韓国だけでなく、世界中どこでも起きる社会問題である。日本でもこのような問題はあちこちで起こっている。一歩進んでいる韓国のIT事情から日本はITについてさまざまなことを学び、しっかりと普及させていくことが必要ではないだろうか。今回のフィールドワークで、日本と韓国のIT事情の相違点、過剰になりすぎないための整備をする必要があることを学ぶことができた。


参考ホームページ
「韓国における情報化と情報教育事情」
「1個人レベルのインターネット環境〜実はすごい韓国のIT事情〜」