教職員から |  2018/09/20

総合文化学科・上野俊哉先生が論集『Principles of Transversality in Globalization and Education(Springer, 2018)』に寄稿しました。

上野俊哉先生からメッセージが届きましたので、ご紹介します。


 



  本書はフランスの哲学者、精神医学者、左翼の活動家であったフェリックス・ガタリの思想や理論を教育の領域で考える共同研究の成果です。グローバルな新自由主義経済のもとでの教育、様々な領域と実験的に横断しあう教育のありようを様々な地域、時代、方法・・・から探る試みです。

 上野はガタリの仕事を、日本の詩人、思想家の谷川雁の営みと比較する論文The incorporeal universe of childhood in the tactical pedagogy in Félix Guattari and Tanigawa Ganを寄せています。戦後、炭坑労働者の運動や文学のサークル運動から出発した谷川は、やがて「ラボ教育センター」という会社を作り、外国語や詩の教育運動を展開し、晩年は「ものがたり文化の会」という運動体で子どもたちと一緒に身体劇を作ったり、詩を読むワークショップを行ないました(和光の学生や卒業生のなかにもこうした運動の末端にふれた人たちがいます)。

 ガタリの思想や理論と、セレスタン・フレネの教育論、自閉症の子どもたちと一緒に暮らしながら特異な哲学をねりあげたフェルナン・ドゥルギーなどとの関連にもふれています。

 ガタリと谷川の最大の共通点は、教える・学ぶ行為を徹底して「しつけ」(専門領域、ディシプリン)のせせこましさ、貧しさから解き放とうとしたことです。二人が生き抜き、「学び逸れた」軌跡は、「心の専門家」「教育の専門家」「政治の専従者」という立場と方法・・・への深い疑いとしなやかな批判の力に支えられていました。

 現行の教育制度や教師という存在がもつ度しがたい権力性に根元的な問いを投げかけるためのヒントがたくさんつまった論集です。

総合文化学科 上野俊哉





最近の記事
月間アーカイブ
このページの先頭へ