教職員から |  2018/01/15

総合文化学科の上野俊哉先生が『Eco Criticism in Japan』(Lexington Books)に寄稿しました。

上野俊哉先生からメッセージが届きましたので、ご紹介します。





 エコクリティシズムという学際的な専門領域が北米で打ち出されてから二十年以上がたちます。

 この間、日本は神戸や東北の震災、原発事故や沖縄の米軍基地建設による環境破壊など、様々な問題に直面してきました。本書はアメリカ空軍学校の和気久明、金沢大学の結城正美、明治大学の菅啓次郎の三人の編者によって編まれた「日本におけるエコ文学批評」の英語圏でのはじめてのアンソロジーとなります。

 生態系や環境という視角から文学を深く読み、社会や文化に批評的に切りこんでいく本書では、紫式部、清少納言、石牟礼道子、大江健三郎、古川日出男、安部公房、金子光晴、村上春樹などの文学、また宮崎駿や黒沢清の映画、さらに現代美術や写真、詩などが各国の研究者によって論じられています。『源氏物語』がエコクリティカルに読まれるマージョリー・ラインによる冒頭論文から、読者は一気に引きこまれるはずです。

 石牟礼の『苦界浄土』の英訳者であり、長年の友人でもあるリヴィア・モネは、何と日本のアニメ「コッペリオン」を題材にしています。わたしは日本最初のSFとされる安部の『第四間氷期』や代表作の『砂の女』をフェッリクス・ガタリやオブジェクト指向存在論との関連で考察する論考を寄せました。

 おうおうにして研究者は自分の専門領域や学んできた方法論だけに閉じこもりがちですが、それらを環境や自然、宇宙との関わり方にしなやかに開いていくような語りや姿勢をエコクリティシズムはそなえています。和光大学周辺の岡上の「足もとの自然」(堂前雅史)を生きなおすさいにも何かのヒントになるかもしれません。
 
 ハードカヴァーなのでいくぶん高価ですが、図書館などでさがしてみてください。


総合文化学科 上野俊哉



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