教職員から |  2016/07/05

総合文化学科の上野俊哉先生が翻訳された
『モノたちの宇宙 思弁的実在論とは何か』が河出書房新社より出版されました。

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モノたちの宇宙 思弁的実在論とは何か
(河出書房新社)



著:スティーヴン・シャヴィロ
訳:上野俊哉


 教育以外の雑務、管理仕事を言い訳に、じっくり研究する暇がないという大学教員の台詞ほどカッコわるいものはないと思っており、忙しい役回りにあてられた年は翻訳の仕事をすることにしています。
 さて今回訳した『モノたちの宇宙-------思弁的実在論とは何か』は、二〇世紀初頭のアメリカの哲学者A・N・ホワイトヘッドの仕事の現代的な読みを提示すると同時に、近年、欧米で新しい哲学のパラダイムとして注目される「思弁的実在論」speculative realismやオブジェクト指向存在論Object-Oriented Ontology、「新しい唯物論」New Materialismといった諸潮流をわかりやすく解説する入門書にもなっています。
 エコロジーや環境論に関心のある方には「人間もモノも動植物も、全てを同じ足場で見る」哲学の視角にふれられます。現代美術やデザインに関心のある人には、近年あらゆる展覧会のテーマやカタログでこの新しい理論潮流が注目されている理由がわかるでしょう。序章で詩人マラルメの言葉が引かれているように「つまるところ万事、美学と経済学につきる」と考えるこの本のヴィジョンは、経済学や社会学、文化人類学など隣接諸科学とも密接な関わりをもっています。
 人間がいなくても世界は実在する(削除主義)、あらゆるモノ、人間以外の動植物も粘菌もカビも、もしかしたらニュートリノにいたるまで心=精神をもっているかもしれない(汎心論)など、ちょっとびっくりするような考え方も検討されており、環境と心、宇宙と精神のありようについて、本当に根元的な意味でモノにそくして考える存在論が、この本では繰り広げられています。岡上の自然や農業にふれている人も、たまにはこんな哲学で遊んでみてはいかがかと。
 また本書はモノや自然と響きあう文学の言葉にも深い洞察を与えてくれるでしょう(そもそも本のタイトルはロマン派の詩に由来し、本書ではしばしばSF小説が題材にとられています)。
 なぜかわたしの著作や翻訳書は、和光生協に置かれることがないのですが、どこかで手にとってみてください。きっと何かが響くはずです。

総合文化学科 上野 俊哉

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みなさま、ぜひお手に取ってご覧ください。

【河出書房新社 作品紹介ページ】

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