サークル |  2015/05/08

5月7日(木)から9日(土)に、和光大学キャンパス内にて、

演劇研究会による『隣の花』の公演が行われます。

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和光大学演劇研究会 2015年度新入生歓迎公演
『隣の花』

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■日時(開演時間)
5月7日(木) 18:30〜(終了)
5月8日(金) 18:30〜 
5月9日(土) 13:30〜

*開場は、開演の30分前

■会場
和光大学 D棟地下1階学生ホール

■料金
200円(新入生無料)

□作:岸田國士

こちら、総合文化学科の田村景子先生より、
劇評が届きましたので、ご紹介いたします。

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 時代はくり返し戯曲はループする――否!

 今から90年以上前、大正期の終わりに岸田国士(1890〜1954)は、「演劇の本質」と題する文章にこんなことを書いている。「戯曲のもつ『美』は、文学の他の種類に於ては、求め得られない、――少くとも第一義的ではない――『語られる言葉』のあらゆる意味に於ける魅力、即ち、人生そのものゝ、最も直接的であると同時に最も暗示的な表現、人間の『魂の最も韻律的な響き(動き)』に在ると云へる」。
 フランスで演劇を学び、アジア・太平洋戦争へと傾きかけた日本に戻ったこの劇作家は、築地小劇場系とは別のやり方つまり「美」的な言語芸術としての演劇を模索した。
 そして、2015年5月7日18:30分、和光大学D棟地下学生ホール。
 音響が大きすぎる、もしくは、役者の喉があたたまっていない――赤と黒に塗り分けられたセットを、4人が互いに無関係に徘徊しつつ不鮮明に言葉を連射する幕開きで、私は軽い眩暈に襲われた。簡素で抽象化された舞台も、日常を断ち切ると思いきや日常を最大限異化して見せる俳優の動きも、たしかに現在的ではある。とはいえ、対するのが岸田国士の科白劇ならば、役者にはそれなりの訓練が必要と伝えたはずだったのに……さらにまずいことに、教え子でもある「和光大学演劇研究会」の役者たちがまくしたてるのは翻案ではなく、寸分の違いなく、あの、岸田の「語られる言葉」なのだ。
 だが、幕開きのやり取りをよくよく聴くうちに、これが岸田国士の戯曲「隣の花」では末尾付近に置かれた対話だと気がつく。なるほど、戯曲の言葉やモチーフではなく、戯曲そのものを切り刻んだのかと思った時には、もう遅かった。
 暗転――。
 次にライトが照らしだしたのは、隣同士に住まう二組の夫婦の些細で微妙なすれ違いと微かな不義の匂い、すなわち『隣の花』の冒頭部である。音響は消え、小さなD棟地下ホールはまさしく「和光大学演劇研究会」的『隣の花』が演じられる「劇場」と化す。
 観客との意思疎通を放棄するかのようにはじまったドラマは、瞬時にウロボロスのように閉ざされ、戯曲のはじめから辿りなおされる。それは、役者たちが整然と/凄然と描き出す人間(夫婦)間の意思疎通の不全へと繋がり、観客の内面へも重く浸透する。特に久慈役の針谷慧は怪演で、五十里厚子と堀江やまのは対照的な女性像を演じ分けることに成功し、畠中瑠夏は今風の愛すべき青年を地でいった。彼らの微妙にかみ合わない科白のピッチや明らかに異なる発話のテンションも、初演回(2015年5月7日)ゆえの不統一とは思いたくない。違った演技法を振り分けられた役者の身体そのものも、人間の意思疎通不可能性の視覚化に違いないのだ。
 時代はめぐり、新劇の復興がささやかれる今、戯曲『隣の花』は岸田から、主宰・舞台監督の田村ともや、演出の水沢素数へたしかに引き渡された。折しも春、小劇場に足を踏み入れたことがないかもしれない新入生のための歓迎公演は、誰にも覚えのあるテーマを30分重ね上げ、観客は「語られた言葉」を媒介に自分の「人生そのもの」について思いをめぐらすことから逃げられない。演劇へのいざないとしては、パーフェクトだろう。
 次期作は、木下順二なんかどうだろうか? あるいはブレヒトの再降臨なんて?? または、三島戯曲を派手に破裂させるのは嫌??
 新劇風の科白劇も、それを解体する過程も見せてもらった。キミタチにとって関係性というものがいかに重大なのかも、よくわかった。だからこそ私は、関係の閉塞にニヒリスティックな微笑を投げるだけの少年期の現状追認を、キミタチがすでに脱しつつあるはずだといっておかねばならない。
 今ここにある「人生そのもの」も「人生」の集まりとしての社会も破裂させてしまう「語られる言葉」の異化的な連鎖を、今だから聞きたい。岸田の言葉だけでは、もう、あらゆるところで危機がせまる2015年には届かない――。
 めぐりめぐるループの先を目指して、走りだせ!!

総合文化学科 田村景子

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みなさま、ぜひご来場ください。

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