教職員から |  2014/01/27


2014年1月15日(水)にジェンダーフォーラム主催の卒論発表会を開催しました。
性差や性別規範に関する問題意識にもとづいて論文を執筆した学生に声をかけたところ、3学科から6名が手を挙げてくれました。
オーディエンスは学生5名、教職員5名で、活発な質疑応答がなされました。
当日の様子が届きましたので、ご紹介します。(発表順)
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(1)松島つぐみさん(現代社会学科)
 『若者ホームレス:居場所を守るために』。松島さんは、ホームレスに女性が少ない(見えにくい)のはなぜか、という問いを、ホームレス経験者の若い女性、Yさんへのインタビューから分析しました。
 Yさんは、もてる人間関係や知識を総動員してSOSを出し続け、友人宅や教会などを転々としていたため、「家がない」ことが見えにくかったというケースでした。
 また、Yさんがホームレスから抜け出したのは、母親の再婚相手からの金銭的援助がきっかけでした。Yさんの体験から、社会関係資本の重要性に加えて、「制度ではなく男性(父親や夫)によって救われる」という日本の福祉のあり方をも描き出しました。

(2)岡崎志歩さん(現代社会学科)
 『若者の「保守化」とは何か:和光大生の性別役割分業意識から』。「男は外で働き女は家庭を守るべき」という考え方に賛成する割合がすべての年齢層で上昇している、という世論調査の結果をよく耳にします。
 岡崎さんは、こうした意識の変化の背景に関する考察と、和光大学生の意識の実態についてまとめました。
 和光大学生に対する意識調査の結果、和光大学生は、①一般より「賛成」の割合が小さかったこと、②「賛成」した女子学生は職業や将来に対するビジョンを明確にもっていない傾向があること、「賛成」した男子学生は私生活より仕事を優先する意識が強い傾向があること、などが統計的に示されました。

(3)髙橋一平さん(心理教育学科)
 『セクシュアルマイノリティ男性のカミングアウトにおける条件と過程:当事者男性たちの困難に注目して』。髙橋さんは、カミングアウトをしたゲイ/バイセクシュアル男性3名と、カミングアウトを受けた異性愛男性2名にインタビューを行いました。
 カミングアウトは、①何らかの「秘密」を打ち明けてくれた相手に対する「返礼」の意味を込めて、②「付き合いが長い人」より「付き合いが短くても寛容な人」に対して、③その場のノリや雰囲気の力を借りて、なされやすいことが明らかにされました。
 また、ゲイコミュニティとつながっていることや、過去のカミングアウトで拒絶された経験がないことが、次のカミングアウトを促進することも示されました。

(4)中原稿さん(総合文化学科)
 『「男の娘」論』。中原さんは、女装をする男子「男の娘(おとこのこ)」の描かれ方を、漫画や雑誌、ワイドショー報道などを資料にして分析しました。
 ワイドショーが取り上げる「男の娘」は、①自分の性別に対する違和感がなく、②恋愛対象は女性であり、③女装は純粋に趣味として楽しんでいる、といった特徴をもつ男性として意味づけられていることを明らかにしました。
 ここから、「男の娘」が「オネエ」や「ゲイ」ではなく、「草食系男子」「サブカル系男子」などのカテゴリーと関連づけられ、「普通とは少し違うかわいい"○○系男子"のひとつ」というコンテンツとして流通していることの問題性について論じました。

(5)加藤海生さん(現代社会学科)
 『少女文化の闇と社会』。加藤さんは、現代日本の「少女」たちが危険をともなう性行動に走ってしまう問題を取り上げました。小学生や中学生、高校生の女子が接する雑誌は、「性に奔放であること」を奨励するようなメッセージであふれています。低年齢を危険な性交渉へと誘い、被害が起きているのに解決しようとしない社会の問題もあわせて指摘しました。

(6)梁瀬えみさん(総合文化学科)
 『同性愛表現論:「孤島の鬼」と近代の同性愛』。昭和初期に発表された江戸川乱歩の探偵小説『孤島の鬼』。男色に関する資料を収集し、同性愛に対する関心も語っていたという乱歩が、この作品で同性愛をどのように表現したのかを分析しました。
 『孤島の鬼』は、同性愛に対する否定的な態度を見て取りやすい一方で、主人公の男性が友人の男性の存在やふるまいに揺れ動く様子も書き込まれており、そこから「乱歩の同性愛への排除しきれぬ憧れ」が読み取れることを梁瀬さんは論じています。

 どの発表からも真剣に卒論に取り組んだことが伝わってきました。
ほかにも、ジェンダーに関する優れた論文を執筆した4年生はたくさんいます。
ジェンダー・フリースペースは、それらの論文を所蔵していますので、これから卒論に取り組む人は、ぜひ参考にしてください。(現代社会学科 杉浦郁子)

★この情報は、現代社会学科の杉浦先生より寄せられました。

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