教職員から |  2012/01/13


経済学科の加藤巌先生から「ボルネオ便り」が届きました。
今回は「バリオ」を訪れた時のお話です。

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こんにちは、経済学科の加藤巌です。今回はマレーシア国立サラワク大学との共同調査のため、東マレーシア(ボルネオ島)のバリオ(Bario)を訪れました。
バリオというのは、ボルネオ島サラワク州の山間部にある村です。インドネシアとの国境線に近いところです。ここは、少数民族クラビット族の居留地として知られています。マレーシアの観光PRビデオなどでは、耳たぶに大きな穴をあけて、そこに重たそうなイヤリングをぶら下げている人々を紹介することがあります。これがクラビットの人々です。男女ともに大きなイヤリングを下げています。僕自身も肩まで垂れる長く穴のあいた耳たぶを持つおばあちゃんたちに会ってきました。また、クラビットの女性たちはその両足へ独特の文様の入れ墨を入れることでも知られています。しかし、こうした風習はいま若い人には引き継がれていないようです。
1バリオの遠景.jpg

バリオは山に囲まれた盆地です。ただし、盆地と言っても2000m級の山々の間に広がる土地です。その標高は約1000mです。ですから、気候が穏やかです。とても熱帯のマレーシアとは思えないほど、朝夕は涼しくなります。恐らくこの気候を利用しているのだと思うのですが、バリオで作られるお米(バリオライス)とパイナップルは美味しいことで知られています。

2案山子がいる田園風景.jpg

現地で見た、そのお米は水稲でした。日本と同じような水田風景が広がっていました。サラワク州の南部にある、勇猛果敢で知られたイバン族の村で見た田んぼとは様子が違っていました。イバン族の村は低地にあり、そこでは陸稲の田んぼが広がっていました。こうした違いは、土地の高度差による気温の違いから生み出されるのでしょうか。
さて、バリオの住民ですが、その人数は1000人ほどだそうです。広い盆地がいくつもの集落に分かれています。集落ごとにキリスト教の教会がありました。そう、彼らはクリスチャンなのです。以前に聞いた話では、山間で暮らす人は野豚(イノシシ)が貴重なたんぱく源なので、それらを食べられないイスラム教徒にはならないだろうとのことでした。
先述の如くバリオの住民は1000人だそうですが、クラビット族は全体で6000人ほどだそうです。つまり、クラビット族の多くの人は村を出て国の内外で暮らしているとのことです。そして、村から出て行ったクラビット族からは、政治、行政、教育、芸術、研究などの分野で優れた活躍をする人々が誕生しています。
実は、バリオへ出掛ける前に、多くのマレーシア人の友人達から「クラビット族は優秀な民族である」と聞いていました。確かに、村で出会う人々は博学で、その見識の高さや論理的なモノの考え方などには感心させられるばかりでした。また、語学能力の高さ(英語が老若男女で堪能)も驚きでした。
一方、バリオの主要産業は農業です。いたるところに田んぼが広がっています。稲穂がゆらゆらと風にそよぐところは「稲穂の海」といった風情でした。
また、最近はマレーシア国内やヨーロッパからの観光客も増えているようです。今回はあちらこちらに点在する宿泊施設を見学に出掛けましたが、現在は20軒ばかりの宿泊施設があるそうです。その大半は昔ながらのロングハウスを改装したゲストハウスでした。そのどれもが、豊かな緑に囲まれていて、素敵な風景を持っていました。僕が宿泊した宿からも「ウワァー」と歓声をあげたくなるほどの見事な景色を楽しめました。張り出したベランダからは、見渡す限りの水田が広がっていたのです。
3宿のベランダからの景色.jpg

実は、二日間ほどで宿泊施設を見てまわったのですが、トラックの荷台に乗って移動したこともあってフラフラとなり、しまいには自分が何軒目の宿泊施設を見学しているのか分からなくなってしまいました。それぐらい、あちこちに宿泊施設が点在していました。
バリオでの暮らしは日本人の感覚からするとノンビリしたものに思えます。電力会社からの送電線が来ていないので、各家庭では自家発電機を使っています。ただし、自家発電機は夜だけ使っているようです。そこで、ひんやりとした高原の朝でも、温水は使えません。僕も毎朝、山から引いてきた冷たい水でシャワーを浴びて、しゃっきりと目を覚ましていました。
朝はまず、台所の暖炉に火が入ります。暖炉で燃やすのは薪です。そこで湯を沸かし、お茶を作り、朝食の煮炊きも済ませます。僕が朝食として食べたのは、笹のような葉で包まれた蒸したバリオライス、パンケーキ、野豚の燻製、地元のねっとりしたフルーツ(他の場所で食べたタラップTarapという果物に似ています)などでした。朝食は宿のテラスで一面に広がる水田を見ながらいただきました。

4朝食で食べたバリオライス.jpg 5朝食で食べた地元のフルーツ.jpg

日中も仕事の合間なのでしょうか、三々五々、集まってお茶を飲んでいる人たちを見掛けました。僕もあちこちで誘われて、日に何度もお茶を飲みました。そういえば、バリオの空港に到着して、まずしたこともガイドのジョンさんとお茶を飲むことでした。確か、隣のテーブルでは、のってきた飛行機のパイロットもお茶を飲んでいました。
最後に、バリオへの行き方です。まず、日本からはマレーシアの首都クアラルンプールへ行きましょう(約6時間)。そこからボルネオ島のミリ(Miri)まで国内線で向かいます(約2時間半)。ミリからは小型の飛行機(19人乗り)でバリオまでは1時間ほどです。陸路ないしは川を上流に向かってボートで行くこともできるそうですが、舗装されていない道路は途中で悪天候などのために寸断されることがあり、また、ボートだと2日は必要だとのことでした。そこで現実的には飛行機を利用することになります。季節によって増便もあるそうですが、1日にミリからバリオへ2便が飛んでいます。
小型の飛行機ですので、苦手な方がいるかも知れませんね。搭乗前には荷物だけではなく、乗客も全員が体重を計られました。座席は自由に選べます。ドアの無い操縦室からパイロットが顔を出して「どこでもいいから自由に座ってくれ」と叫んでいました。そして、僕が登場した時は、乗客(12名でした)が揃ったことが確認されたら、定刻よりも早く離陸していました。おおらかですね。
ながながと書いてしまいました。正直なところ、まだまだ書き足りません。日本人の目からすると「何も無い」と言えそうなバリオなのですが、とても豊かな人々の繋がり(コミュニティ)がありました。豊かな自然に囲まれて、自分たちの暮らしを自らの手で支えている人々の存在にとても惹かれました。また再訪したいと思っています。機会があれば、海外フィールドワークの一環で学生の皆さんと訪問したいとも願っています。ご興味のある方はぜひご一報ください。お待ちしています。

経済学科  加藤 巌

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