教職員から |  2009/10/27


こんにちは。経済学科の加藤巌です。
2009年4月から、マレーシア国立サバ大学(UMS)経営経済学部(SPE)で客員教授を務めています。今日は10月22日(木)と23日(金)にUMSで開催された『第2回人的資源経済学セミナー2009』のお話をしましょう。

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『第2回人的資源経済学セミナー』の横断幕とヤシの木に囲まれた会場「人的資源経済学」とは「Human Resource Economics」の和訳です。良く似た言葉に「人的資本(Human Capital)」というものがあります。最近は日本でも、ちょくちょく「人的資本」という単語を聞くようになりましたね。とくに米国のゲイリーベッカー教授が「人的資本」の研究でノーベル経済学賞を受賞(1994年)してから耳にする機会が増えたようです。

ごく簡単に言ってしまうと、この「人的資本」とは一人一人の人間が持つ(働く)能力のことを意味しています。例えば、Aさんは大学で一生懸命に勉強をして資格を取得したので、より高度な仕事をこなす「人的資本」を手に入れたなどと言えるでしょう。

一方、「人的資源」は「人的資本」を総体として捉えた概念のようですね。少し分かりにくいかも知れませんが、それぞれの「人的資本」を持った労働者が集まって「人的資源」を形成していると言えるでしょう。例えば、それぞれ10ポイントの人的資本を持った労働者が3人集まれば、社会全体で30ポイントの人的資源があると説明できるかも知れません。

そこで"資本"と"資源"の双方を貫く研究課題は、どのようにして「人的資本」を高めつつ、社会全体が持つ「人的資源」を有効活用していくのかということでしょうね。

実は「人的資本」と「人的資源」に関する研究は、経済学の中でも比較的あたらしい領域といえます。また、ヒトに関する研究分野ですので、社会学や心理学などの関連領域との共同研究がすすんでいます。UMS経営経済学部にも「人的資源経済学科」があり、同大の社会学部や心理学部、さらには労働組合や海外の大学などとの活発な学際的研究が行われています。

今年は10月22日(木)と23日(金)の二日間、UMSを会場として『第2回人的資源経済学セミナー2009』が行われました。今回は和光大学経済経営学部から鈴木岩行先生、徳永潤二先生、金雅美先生、私(加藤巌)が参加しました。

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▲セミナー二日目の基調講演として行われた加藤巌先生の研究報告

セミナーでは、鈴木先生が「ベトナムにおける多国籍企業(日系企業、韓国系企業、台湾系企業)の人事管理」に関する実地調査の結果を研究報告しました。具体的な数値が出て来るたびに聴衆の間から驚きの声があがっていました。
徳永先生は「昨年来続く世界金融の不安定な状況がどのように発生したのか、また、その結果は何をもたらすのか」についてと、「アジア共同体と共通通貨実現の可能性」に関して(二日間で都合三回の)研究報告を行いました。きわめて示唆に富んだ内容でした。会場に来ていた海外の専門家らから鋭い質問が飛び、徳永先生との間で議論が進みました。

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▲パネルディスカッションの様子(左端が徳永潤二先生)。聴衆は200人位でした

金先生は「グローバルに活躍できるビジネスリーダーに求められる資質とその育成」に関して研究報告を行いました。実は、金先生の発表は初日の基調講演で、その後の他の研究者の報告と議論の土台でした。国際会議初日の基調講演という、緊張する状況下にもかかわらず、金先生はその大役を見事に果たしました。また、金先生の報告内容には米国や日本のMBA(経営学修士号)取得者の就職状況なども含まれていたため、参加していた若い大学院生らにも刺激を与えたようでした。

私は「日本の高齢者が元気に働く様子」について話す機会を持ちました。二日目の基調講演および公開講座として設定されていたので、多くの大学生が聞きに来てくれました。マレーシアの学生の"知りたい"という知識欲は高く、その吸収力に驚かされています。彼らの受講態度や鋭い質問が出てくることなどから、若い国であるマレーシアの勢いを感じました。正直なところ、鋭い質問には思わず怯んでしまいましたが。

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ご存じのように、マレーシアは外国企業による工場移転など、直接投資の受け入れに積極的です。経済開発もおおむね順調で、今後の発展も大いに期待されています。それだけにマレーシアの若い研究者や大学生らは、人的資源の蓄積や活用に関して貪欲な知識欲を持っているようです。日本や他国の経験をどんどん吸収していこうとの姿勢が見られます。

国際貢献の一環として日本からの技術移転はよく語られますが、これからは人的資源に関する日本の経験や研究成果をマレーシアの人々と共有していくことも貴重な国際協力となるように思われます。

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▲セミナーの裏方を務めてくれた学生達との記念写真
(前列着席・左端から、鈴木岩行先生、金雅美先生、徳永潤二先生、加藤巌先生、UMSのバラ先生、ジェームズ先生、ジェームズ先生の後ろが古岡文貴先生)

和光大学はじめ日本の大学院生のみなさん、如何でしょう、どのようにお感じですか。私としては、これから経済学系や国際開発分野で大学院受験を検討している学部生のみなさんが専攻を考慮する際、今日の話をちょっぴり思い出していただければ幸いです。

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